今日の書籍紹介は、「子どもの脳を傷つける親たち」
脳研究に取り組む福井大学の小児精神科医 友田 明美先生 著 です。
– 目 次 –
序 章 健全な発達を阻害する脳の傷つき
第一章 日常のなかにも存在する不適切な養育
第二章 マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響
第三章 子どもの脳がもつ回復力を信じて
第四章 健やかな発育に必要な愛着形成
終 章 マルトリートメントからの脱却
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本書では「虐待」と呼ばず、「マルトリートメント(不適切な養育)」という言い方をしています。そして、罵倒したり、ぶっ叩かなくても、子供の脳に影響を与える行為を「マルトリートメント」という言い方に全部含まれます。
「脳を傷つける」という衝撃的な言い方ですが、どんな風に脳を傷つけるのか、この仕組みが分からないので、大したことないと考えがちですが、本当に重大なことが待ち受けることになります。
1.どのように「脳を傷つける」のか
脳の機能、仕組について、ちょっと、勉強していないと理解できないでしょうが、例えば、人間の脳は、生まれてきて目が見えるようになるまで、脳の中でどのようなことが起こっているのか。。脳細胞(ニューロン)は、シナプスでつながろうとしますが、視神経の細胞などは、生まれてくるときはフルスペックで、ニューロンとつながっていた細胞同士の間で、要らない繋がりは、ニューロンの間引きが始まります。要は接続が切断されて、最適化されます。
この仕組は、成長過程の中で、色々な部所、大脳の前頭前野、側坐核、扁桃体、海馬などの器官が、ネットワークで繋がり、連携して働いていますが、人間が成長する年代によっても、つながりが増えたり減ったりして、脳の機能の成長も変わってきます。
脳は、高校生くらいまでは成長しますが、主に、幼少期が一番成長するタイミングなのですが、この時期に、親から、DV、ネグレクトなどを受けると、脳のネットワークの編成が上手くゆかなくなるのです。しかも、脳内伝達用のホルモンも出なくなり、ニューロンからニューロンへの情報が伝わらなくなるのです。
脳を本当に傷つけたりするのではなく、脳の成長、脳の神経細胞とシナプスと脳内ホルモンのバランスが、崩れて、脳細胞の情報伝達に不具合が生じるということです。
その結果、学習欲の低下や非行、うつや統合失調症などの病を引き起こすことが明らかになったようです。 これが、子供の「脳を傷つける」という意味だと思います。
もっと、激しい衝撃を受けると、子供に限らず、「トラウマ」、「PTSD」などを発症します。
発達障害、人格障害、愛着障害もほぼ、同じように、脳の「配線」がおかしくなることです。
おかしい奴の事を、脳が腐っているといいますが、腐っているのではなく配線がおかしい為に、正しく「情報」が脳内のネットワークに伝わらなくなることです。
2.子供は、親を選べないのです。
世の中には、本当に、「クズ」、「カス」のような親が、親というより、たまたま、出来てしまって、産み落としてしまったとしか言いようのない、本当に社会的に、どうしようもない親がたくさんいます。
その中には、貧困だったり、選んだオスが、クズだったり、社会的には立派だが、人間としてはクズだったり、様々な理由で、生まれ落ちた子供に取って、劣悪な、地獄のような環境の中で、生き抜かなければならない状況に置かれますが、悪いことに、脳の成長過程の中で、劣悪な環境にさらされると、流石にの脳も、正常に、シナプスでニューロン同士をつなぐことが困難になってしまいます。
「子どもの前での夫婦喧嘩」、「心ない言葉」、「スマホ・ネグレクト」に「きょうだい間の差別」これも、りっぱな、マルトリートメント(不適切な養育)だと言っています。
3.子供の脳が傷つかないようにするにはどうしたらよいか
子供ではなく、親自身の幼少期の養育環境が大きく影響しているのは確かです。 親も同じような劣悪な環境で育っていれば、同じように、子供も同じ環境に置かれてしまいます。
この劣悪な、親の脳の状況が、子供にも連鎖してしまいます。 これは、本当に恐ろしいことに、末代まで続いてゆきます。
この連鎖を断ち切るには、どうしたら良いのかということが、一番、大切な部分であります。
子供が成長する時に、安全基地のような親の存在が必要ですが、幼児期に親がちゃんと役割を果たせないと「愛着形成」がうまくゆかず、これは人間以外の哺乳類の動物でもそうですが、その社会の中で、生きてゆくのに困難な状況の脳の変形してしまいます。
人間も動物も、その社会の中で、共に暮らしてゆく、暗黙のルールが頭の中の配線、ネットワークに備わり、うまく、お互いに協調し合いながら生きてゆくのでが、脳の配線がおかしくなると、この営みが困難になって問題が起きてしまいます。
脳研究に取り組む小児精神科医が、科学的見地から子どもの脳を解明し、傷つきから守る方途と、健全なこころの発達に不可欠である愛着形成の重要性を説く。
これは親の問題でもあり、これが、一番先にやらなければならない事でしょうが、親が自己申告してくるはずも無く、問題が潜在化するばかりです。
・親子代々続く貧困のせい。
・親子代々続く、「発達障害」のせいで、子供に連鎖が続く。
・親の劣悪な環境で、子育てした結果の子供の愛着障害。
「愛着障害」は遺伝的には連鎖しませんが、劣悪な環境は連鎖しますので、もろに子育てに影響します。
年々、子供の数が減っているのに、「虐待」が減らないのは、この連鎖が原因でしょう。
ですので、まずは、「親」を再教育する必要が有りますが、親の状態も、生まれつき発達障害を背負っているのか、愛着障害を養育過程の中で背負ってしまったのか、劣悪な生活環境を改善できれば立ち直れるのか、社会の仕組みの中で取り組む必要が大いにあります。
また、貧困家庭でなくて、裕福な家庭で、有名な偏差値70以上の進学高校に通っている子でも、親からの過度のプレッシャーからか、「脳」が病んでいる子は沢山います。それと、過度の過保護でも「愛着障害」は、十分に発生します。
そして、「貧困」でなくても、「引きこもり」でなくても、親から自立できない子なんて、世の中にたくさんいます。 結婚できないなどと言う問題以前の話です。
※子供を決して自立させようとしない親
もうこれは、親がバカすぎて、子供を甘やかしていると「いつまでも、子供が自立できない」という考える想像力も無い、ただ「可哀そうだから」という、自己愛の強すぎる「クズ親」がさっくりと結構いるのです。
<余談>
トランペットの巨匠の子供への暴行の問題も、巨匠だからとかは、全然関係ない。
あの子供を観れば、分かるように、止めても絶対やめない、あれは大人を「なめている」のではなく、あの止まらない激しい「衝動」。。絶対におかしいでしょう。 あの頭のおかしい子に対して、あれだけの暴力を振るう事が、はたして、子供の脳がどう受け止めるのか。
正常な脳の子は、あそこまで「衝動」を表さないでしょう。 明らかにおかしい子に対して、大人がとる行動は、あれが正しいのか? この本の著者に聞いてみたいものです。
私は、誰であろうが、あの様な衝動の止まらない子に、あそこまで、大人が手を出すことは、絶対に、まずい事だと思います。
教育と言いますが、通常の子供と違う、明らかに、何らかの「障害」を持った子を一緒に、あの手段で良いんだと云う思い上がりが、なんとも「無知」で、確かにトランペットを吹けば巨匠ですが、教育者でも何でもなく、タダの「クソ爺」です。
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