【新型コロナの後遺症】新型コロナ感染で脳内免疫細胞に異常か 中枢神経の後遺症の一因?

2023-04-04、
本日のお題は、新型コロナ感染で脳内免疫細胞に異常か 中枢神経の後遺症の一因? という記事を見つけましたので、この研究の内容を理解するために調べてみました。

なぜかと言えば、コロナ感染により、後遺症が発生している原因として、「脳神経細胞」ではなく、「免疫細胞(ミクログリア)」が影響していると言われ、どういうことなのか? 気になり、周辺の情報も集めながら、調べてみました。

新型コロナウイルス感染症や後遺症で表れる中枢神経症状について、慶応大の岡野栄之(ひでゆき)教授(神経科学)らの研究チームは、脳内で不要な物質を取り除く作用がある免疫細胞(ミクログリア)がウイルスに感染し、それに伴って中枢神経が傷んで発症している可能性を、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って確認したと発表した。

ヒトのiPS細胞から、脳内の神経細胞と免疫細胞(ミクログリア)などを作製。新型コロナに似せたウイルスを使って、これらの細胞に感染させる実験をした。

その結果、どの疑似ウイルスもミクログリアのみに効率よく感染することが分かった。ウイルスに感染したミクログリアが、異常な活性を起こしたり死滅したりすることで、炎症性の物質が増えて神経細胞に障害を引き起こすと考えられるという。

今回の研究成果から、一部の患者ではミクログリアなどの免疫機能の低下からウイルスが脳内で完全に排除されずにミクログリアへの感染が続き、後遺症が長引いている可能性が浮かんだ。

どうやら、コロナウイルスが「脳神経細胞」に感染しているのではなく、脳の機能をサポートしている他の「グリア細胞」が感染して、機能不全を起こしている様なのです。

頭の中の「脳」は主に、神経細胞(ニューロン)グリア細胞(神経膠細胞)の2種類の細胞で構成させていますが、その中のグリア細胞についてです。

脳に関する知識を深める為に
■頭(脳)の中の構造は、どうなっているのか、どんな機能部品(臓器)で成り立っているのか?
神経細胞以外の細胞は、何種類あり、それぞれ何をしているのか?
神経細胞以外の細胞が、何らかの原因で機能不全になると、どんな影響が出るのか?

 

1.「グリア細胞」について

脳の研究は、「脳神経(ニューロン)」の研究は、大分、進んでいるのですが、「免疫細胞」など「グリア細胞」の研究は、まだ謎が多く、100年くらい研究が遅れていると言われています。

脳の「グリア細胞」とは、神経細胞のサポートや保護をする細胞で、細胞の数は、神経系の細胞のうち、約90%を占めています。

図の参照:https://nmosd-online.jp/about/reason/

グリア細胞にはいくつかの種類がありますが、いずれも脳神経細胞をサポートする働きをしています。
■星状グリア細胞
神経細胞の周りに存在し、神経細胞に必要な養分を供給したり、細胞間の情報伝達を補助したりします。

■オリゴデンドロサイト
神経細胞の軸索(アクソン)を包み込む役割を持ち、神経伝達物質の速度や効率を高めます。

■ミクログリア細胞(マイクログリア細胞)
脳の免疫系に関与し、神経細胞を守る役割を果たします。

■アストロサイト
神経細胞を支える役割を持ち、神経伝達物質の濃度を調節することができます。

 

2.グリア細胞の一つ、この「免疫細胞(ミクログリア)」について

脳内の免疫担当細胞であるミクログリアは、かつては消極的な監視役(炎症性メディエーターの産生・放出を行う)だと考えられていたが、最近になって、発生する神経細胞の「剪定」に関与して重要な役割を果たしている事が分かってきたようです。

近年では炎症時だけではなく、正常な脳の発達段階にミクログリアの貪食能が積極的に寄与することが示唆されている。例えば、神経回路の形成過程において、ミクログリアは活動の弱いシナプスを積極的に除去し、活動の強いシナプスを残存させることで、機能的神経回路の成熟に関与することが示された。

1)ミクログリア細胞

ミクログリア細胞は、グリア細胞の一種であり、脳の免疫系に関わる細胞です。
脳や脊髄の中で見られる最も小さなグリア細胞であり、神経細胞の周りに存在する他のグリア細胞とは異なる起源を持ちます。

ミクログリア細胞の役割は、
■脳内の異物や損傷細胞などを認識し、吞み込んで処理することができます。このプロセスは、ファゴサイトーシス(phagocytosis)と呼ばれます。
■ミクログリア細胞は、感染や損傷があった場合に炎症反応を引き起こすことがあります。炎症反応によって、損傷細胞や異物を攻撃し、修復を促進することができます。

一方で、過剰な炎症反応は、神経細胞を攻撃することもあります。そのため、過剰なミクログリア活性化は神経系の疾患や障害の原因となることがあります。例えば、「アルツハイマー病」や「パーキンソン病」などの神経変性疾患では、ミクログリア細胞が過剰に活性化して炎症反応を起こすことが知られています。

最近の研究では、ミクログリア細胞は単なる免疫細胞ではなく、神経細胞と密接に相互作用していることが示唆されています。例えば、神経細胞が活動すると、ミクログリア細胞も反応して活性化することが報告されています。また、ミクログリア細胞は神経伝達物質を放出し、神経回路の形成や機能にも関与していることが知られています。これらの発見は、ミクログリア細胞が神経系の健康や機能に重要な役割を果たしていることを示しています。

 

3.新型コロナ感染で脳内のミクログリア細胞に異常が発生するか

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、脳内のミクログリア細胞に異常が発生することが報告されています。「COVID-19」は主に呼吸器系に影響を与える疾患ですが、神経系にも様々な影響を与えることが知られています。

「COVID-19」による脳内のミクログリア細胞の異常は、炎症反応の増加によるものと考えられています。「COVID-19」に感染した場合、免疫系がウイルスに対する攻撃を開始しますが、その過程で炎症反応が引き起こされます。この炎症反応が脳内にも及ぶと、脳内のミクログリア細胞が活性化し、炎症反応を引き起こすことが報告されています。

また、「COVID-19」によって脳内の血流が低下することも知られています。脳内の血流が低下すると、ミクログリア細胞に必要な酸素や栄養素が不足することになり、その結果、細胞機能に異常が生じることが考えられます。

「COVID-19」によるミクログリア細胞の異常は、脳機能の障害や神経症状を引き起こすことがあり、具体的には、認知機能の低下、記憶障害、集中力の低下、頭痛、めまい、意識障害などが報告されています。ただし、「COVID-19」による脳内のミクログリア細胞の異常は、症状の発生率や重症度に個人差があるため、必ずしもすべての患者さんに影響を与えるわけではありません。

尚、機能的神経回路の形成不全は、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)、レット症候群、そして脆弱X症候群などの神経発達障害の原因、その発症にミクログリアが関与する可能性が示されている。

 

最後に、

「脳細胞(ニューロン)」や「シナプス」をコントロールしているのは、「グリア細胞」ではないかと、人間の精神活動にも大きく関係していて、「記憶」や「意識・無意識」を制御する仕組みを有している様ですので、ニューロンやシナプスだけでは説明のつかない、いままで謎の部分が、解明されつつあります。

■本来の脳科学上の知能の高さは、脳の配線がシンプル?
ちょっと不思議なのは、
「COVID-19」による脳内のミクログリア細胞の異常は、症状の発生率や重症度に個人差があるため、必ずしもすべての患者さんに影響を与えるわけではありません。。。と云うことです。

元々、異常をきたしている「脳」の場合は、影響が出ないのか?

頭の悪い奴に、「脳の配線が繋がっていないんじゃなか?」と言っていましたが、無駄に神経細胞(ニューロン)同士が繋がっている奴の方が、どうやら、頭が悪い様です。

神経細胞の刈り込み
脳の機能で面白いのは、1つ挙げると、神経細胞の刈り込みで、胎児や生後1歳、思春期の各段階で、脳神経細胞がフルスペック状態になった後、使わないネットワーク(脳神経細胞同士の接続)を刈り込んで切断してしまいます。つまり、脳の「剪定」を実施している。

例えば、言語を覚える時期にその環境に育たないと(狼に育てられたなど)一生、言語を使いこなすことができないでしょう。 目も、生まれてすぐ、目をふさいでしまえば、脳の「視床下部」の視神経が刈り込まれ、一生、目が見えない状態になるでしょう。

この「刈り込み」の仕組みにも、グリア細胞(アストロサイト、ミクログリア細胞等)が関わっています。

脳は実に不思議な謎の機能をたくさん持って、動作していますが、これを「リエンジニアリング」をかけて、人工知能を作ろうとすれば、必ず失敗するでしょうね。 なぜなら、このブラックボックスを解明することは、まだできないのです。

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