【書籍紹介】 誤解だらけの発達障害  岩波 明 (著)

本日の書籍紹介は、「誤解だらけの発達障害」  岩波 明 (著) です。

脳の障害に関する書籍は、新刊書をメインに、もう百冊を超えるほど読んでいますが、この書籍は、よくまとめられた良書です。

特に、中途半端な知識しか持っていない「無知」な人達にでも、分かるように、よくある誤解点を沢山上げて、分かるように解説しています。 ただ、「発達障害」に、大きく関連している、その他の3つの障害「愛着障害」、「人格障害」、「認知機能の障害」について、それぞれちゃんと学んでいなければ、どんな症状が、どう関係しているのかが理解できていないと、いくら説明しても意味さえも認識できないでしょう。

私の場合、人間とは何者なのか? 自分とは何者なのか? 十年以上前から考えるように。
人間の脳のメカニズムを知りたくてたまらない」のです。

「人間の脳のメカニズム」を探り出すと、脳の障害にとどまらず、脳神経細胞学など、脳がどのような構造をしているのか?、どんな仕組みで稼働しているのか? 神経伝達物質、脳と人体ネットワークとの関係など、非常に幅が広い知識が必要である事に気が付くのです。

未だに、「脳科学」は、未解明の分野が多いのですが、ある意味「人工知能」を研究している人たちと共通する部分が有ると思います。

自分と云う「意識」を持つということは、どういう事なのか、どうして、それができるのかと云う事です。

 

■「誤解だらけの発達障害」  岩波 明 (著)

– 目 次 –
第1章 発達障害の基礎知識
□Ⅰ 発達障害とは
□Ⅱ 原因について
□Ⅲ 症状と特徴について
□Ⅳ 診断について

第2章 発達障害は治るのか
□Ⅰ 治療について
□Ⅱ 発達障害の子どもへの対応とサポート
□Ⅲ 大人の発達障害について
□Ⅳ 合併症について

第3章 誤解だらけの発達障害
□Ⅰ まだ知られていない発達障害者のよい面
□Ⅱ 発達障害についての多くの誤解
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1.「ダイバーシティ」の問題

最近、「ダイバーシティ」と云う言葉が、クローズアップされるようになってきましたが、ただ、言葉の意味さえも知らない無知な人が、圧倒的多数で存在していますので、何を言っても認識さえできない方がいます。

一方、そうでない方でも、「ダイバーシティ(多様性)」と云っても、「ジェンダー問題」、「人種」問題、「LGBT」くらいしか思い浮かばないでしょう。

しかし、「ニューロダイバーシティ(神経構造の多様性)」の問題は、下記のような、脳の障害を理解していないと、大きな誤解を生じて、差別や偏見を生んでしまいます。

「ダイバーシティ(多様性)」は、「ジェンダー」、「人種」、「LGBT」の問題だけではないのです。

人間の脳は、1つとして同じものはないのです。 そして簡単に、みなと違うから、「障害」と呼ばれていますが、ホモサピエンスが生き残ってきた過程で、このような脳の特性がほかのヒトと違う人が、進化の過程でも、一定数居るということは、生き残っているだけの価値が、きっと有るからでしょう。

進化のメカニズムは、受精して受精卵が分裂していく過程で、遺伝子は、僅かながらミスコピーを繰り返しています。 この遺伝子の変化が、現状の環境に適合するかどうか、だけです。 適合するものだけが生き残ってきたのでしょう。

ですので、このような「脳」に障害を持っていても、居なくならないということは、現状の環境に適合しているのです。 人類の発展に大きく貢献しているのでしょう。

1)発達障害

自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)

「ASD」、「ADHD」の人たちの共通する特徴で、一番押さえておきたい点です。

通常、私たちはみんな「報酬」を得られる行動を無意識に繰り返す傾向があります。つまり、空気を読んだり、忖度したりする。相手に興味が無くても、ある振りをする。

通常、自分にとって好結果をもたらす行動はどれかを「無意識」で学んでいける心を持っていますが、彼らには、その「心」が無いのです。 無意識で学んでいける、感じ取る「脳」の配線がないのです。 正確には、脳内ネットワークの情報伝達に問題があるのです。

ですので、普通の人か普通にやっている事が、脳のせいで、感じ取ることができないのです。

ただ言葉で、例えば、それは「出世に響きますよ」と言われると、まずいという事には気が付くのです。

自分の心の中に「他人」は、いないのです。 つまり、認知的な「共感力」が無いのです。

他人がどう思うかと云う感じ取る「脳の機能」が働かないのです。

悪気があるのではなく、自分に取っての「報酬」を求めていないので、他人に関して無関心で居られるのです。

ある意味、素晴らしいのです。 回りに気を使わない、こんな人でないと、世の中で「イノベーション」は起こせないのです。

しかし、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなど「イノベーション」を起した成功者ばかりではなく、世の中で生きにくい生活を送っている人たちのほうが、圧倒的に多いのです。

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2)愛着障害

幼児は、生後6ヶ月頃より、2歳頃までの期間に、身近な特定の養育者に対して守ってくれる人に依存する感情「愛着」を抱きますが、これが満たされない状態で養育されると、成長過程で「愛着障害」になります。

子どもがおかしくなる原因を作っているのは、ほぼ養育している「親」ですので、親も同じような障害を背負っていれば、子供は被害を受けてしまいますので、親子代々、続かないようにするには、どうしたら良いのかをまず考える必要がありますが、こればかりは、「優生学」を発動して、「断種」する以外に無いのではないでしょうか。 人権侵害と言われるでしょうが。。。

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3)パーソナリティ(人格)障害

反社会性人格障害(精神病質、サイコパス)、自己愛性人格障害、境界性人格障害などです。

パーソナリティ障害」は、以前「精神病質」、「人格障害」と訳語されていたが、精神分裂病は「統合失調症」に、痴呆も「認知症」に変更され、「人格障害」は「パーソナリティ障害」と、それぞれの名称が変更されている。

・「精神病質」は、「性格の偏りのために自分で苦しんだり、周囲を苦しめている」という概念で、犯罪などを起こす異常者のイメージを持たれた用語でもありました。

・「人格障害」も、人格という日本語に道徳性と結びついた「人格者」といったイメージがあります。それで、誤解しないように、現在では「パーソナリティ障害」と呼ばれています。

「パーソナリティ障害」は、「考え方」、「受け止め方」や「振るまい」が、いちじるしく普通から逸脱した性格です。

原因
パーソナリティ障害は、単に性格の問題では無く、「生まれ持っての脳の特性」、「幼少期のトラウマ」、「劣悪な環境」、「育て方」に影響を受けていると云われていますが、いまだ、はっきりと原因や因果関係が分っていないのが現状です。

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2.脳の「認知機能」に障害がある問題もあります。

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1)知的障害

少年院などで子供たちを見ている過程で、問題を起こして、少年院に入ってこなくても、軽度知的障害(知的障害の8割)、ボーダー(境界知能)の人たちは、知能検査で、問題なしと判定され、認知機能が低いのですが、健常者と見分けがつかなくなり、「忘れられた人々」として、普通の学校でも、困っている子供たちがたくさん居ると言っています。

普通の社会でも、困っている大人たちがたくさん居ると考えると、社会の中で、色々なものが見えてきます。

忘れられた人々」と言っていますが、私は、ある程度見えますので、忘れてはいません。頭を傾げてしまう「不思議な人々」とでも言いましょうか。

発達障害に注意を向けていましたが、知的障害にも目を向ける必要があるように思います。

補足説明———————————————————-
知的障害
■IQ:70 – 85 ボーダー(境界知能)と呼ばれている 知的障害者とは認定されない。
■IQ:69以下が、知的障害(IQにより、軽度、中等度、重度の分けられる)として扱う。

認知機能とは
外界を正しく認識し、正しく実行するための機能のことで、記憶力、知覚、注意力、言語理解、判断、推論などの幾つかの要素が含まれた知的機能を指します。

歳を取って「認知症」になる場合もありますが、若くても「認知機能」に偏りのある人もいるのです。

人間は、皆、同じ物を観ていると思ったら、大きな間違いなのです。 観る人によって、大きく違っている場合が、多々あるのです。

認知の差が生じるのです。どうしてもです。 それは「脳」の配線(シナプス)と脳の機能部品の性能が、一人ひとり違うからです。

 

2)「発達障害」なのか、「知的(認知機能)障害」なのか、判断が付かない人たちが居るのです。

「発達障害」について、勉強していると、「発達障害」なのか、「知的障害」なのか、判断が付かない人たちが居るのです。

この「知的障害」との関係はあるのかという疑問も沸いてきますが、やはり、大いに関係があるようです。

なぜなら、発達障害なのか? 軽度知的障害(知的障害の8割)つまりボーダー(境界知能)の人達なのか? 区別がつかない不思議な人達もいる事に気が付くのです。

本書に、「ASD」の30%から70%、知的障害の10%から30%に「ADHD」の合併症があると報告されているようですので、やはり関係しているのです。

 

3)不思議な人たち

私の場合、お客様の色々な職場を訪問して、事務系の社員にコンピューターやアプリケーションの使い方などを指導する仕事をしているのですが、コンピューターやアプリケーションの使い方を教える以前の問題を抱えている社員が、少ないのですが、いるのです。

まず、
・ちゃんと、自分に与えられた「業務内容」や「仕事の流れ」を理解することができない。
・仕事の順番、優先順位を付けられない。仕事が進まない。
・当然、マルチで業務をこなせない。
・ミスを頻発するが、自分のせいだと思っていない。
・言われたことをすぐ忘れる。

ちょっと「おかしい」が、日常会話、天気がいいとか、今日は暑いとか、の会話はできるのですが、仕事をさせると、その業務をするようになって日が浅くないのですが、自分の仕事のできなさを、まったく認識していない態度なのです。

そう、「私が悪いんですか?。。。」みたいな、言動や態度なのです。

ですので、周りの社員は、「なんだ、こいつは? 何者なんだ?」という「???」マークが付いて、理解不能な「宇宙人」を観ているような感覚になるのです。

「人事権」を持った人間が、このような人たちの特性を理解しないまま、配属するために起こっている現象ですが、周りの現場の社員たちはたまったものではありません。

よほど、問題の有る行動をしない限りは、上司に訴えても、ほぼ上司も「無知」ですので、取り合ってくれないと考えてしまうのでしょう。 ですので、野放し状態になってしまうのです。

多分、「発達障害」の色合いよりも、今まで何とか、それなりの仕事で社会の中でやってこれた、軽度知的障害(知的障害)つまりボーダー(境界知能)の人達なのかと思われます。

「発達障害」の人たちと違い、自分を責めて「(うつ)」などの二次障害は無いように思います。なぜなら自分が悪いと「認知」する心も無いからです。

仕事が全然できないと云う「自責の念」は、薄いのです。

認知機能が低いのですが、健常者と見分けがつかなくなり、「忘れられた人々」が、そうではないかと推測されます。

職場、業務が「ミスマッチ」なのです。
辞めさせることができないなら、それなりの職務に「配置転換」するしかないのです。

現場の担当社員は、私に「どうすればいいですか?」と聞きてきますが、私は、経営者ではありませんので、「まず、上司の、経営者の「無知」を解決しないと、共通の認識が形成されないでしょう」と云うしかありません。

昔なら見過ごされきたのですが、現在は、小さな会社でも、管理社会、情報化社会の中で、普通の社員なら普通にできる仕事もできない人たちが、浮き彫りになってきたように思います。

このような人たちは、「脳」の性能的に、向上したり、改善できるようになるのは、ほぼ無理です。

 

岩波 明 先生の書籍です。

 

3.ひきこもりと発達障害について

追記>— 10月30日 ————————————————
2019年10月30日(水)のNHK「クローズアップ現代+」(午後10時)で、

ひきこもりと発達障害について」という題で、番組が放映されました。

内閣府が、2019年3月29日に発表したひきこもりの高齢化に関する実態調査で、40〜64歳までのひきこもり当事者の推計人数が約61万人と、40歳未満の約54万人を上回った。不登校と同様、若年層のイメージが強い「ひきこもり」だが、むしろ中高年の問題だという事実が浮き彫りになった。

ついに、パンドラの箱を開けたというか、「ひきこもり」について、特に、原因などを明らかにしてきませんでしたが、NHKの番組で「ひきこもり」と「発達障害」の関連性を出してきました。

しかし、社会の「無知」な人間たちは、直ぐに「発達障害=ひきこもる」と浅知恵をはたらかせ誤解するのでしょうが、そうではなく、「ひきこもる」人の中に、何割かが「発達障害」の人が居て、それに早く気が付いていれば、本人も家族も、何らかの対策をできたのではないかと云うお話です。

<いじめ>の問題
学校で、いじめを受けて、不登校になる子供たちも、「発達障害」の子たちが含まれているでしょう。 なぜなら、普通の子と違いますので、いじめの対象になりやすいのです。

学校のように、「みんな平等よ」と教えられている場所では、逆に「同調圧力」がかかり、同調できない「発達障害」を背負った子はいじめられます。「ヒエラルキー」の無い場所では、必ず「いじめ」が発生するのです。
「サル」の社会では、子供はいじめられません。 親のヒエラルキーがありますので、いじめたら、大変なことになります(親サルが出てきてやっつけられます)。ですので、「いじめ」は無い様です。

 

多分、みんな気が付いていたのでしょうが、「ひきこもる」本人も、「自分が何者」なのか?と云う事を発信すべくもなく、今頃になって、やっと、分かってきた様な状況ではないかと思います。

認識されて、支援の手が伸びれば、社会復帰できる方が、増えると思います。

見逃した方は、NHKですので、きっと「再放送」しますので、チェックしてみてください。

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・「ひきこもり」の問題について
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4.世の中の人間の有り様を理解するには

毎日、飽きもせず、複数件の「書店」を巡回して、何気なく、手に取った書籍が、掘り出し物の場合があります。例えば、同じようなタイトルで、また同じ内容かと思いきや、そうではなく、うまく「まとめ」られている場合や、新しい「知見」が多数掲載されている場合があるのです。 たとえ千円位で購入できる文庫本でもです。

SNS、ネットやテレビも同じですが、1つのメディアが報じたことは、まだ、「ファクト(事実)」かどうか分かりません。「裏」を取るという意味において、例えば、書籍でも1冊読んだくらいではファクトか、「エビデンス証拠・根拠)」があるかどうか、なんて分かりません。

ですので、同じ「コンテキスト文脈」で書かれた書籍を必ず複数冊読むのです。 書籍は、必ず、著者と編集社を通していますので、複数冊の書籍を読めば、嘘でなければ、大体、同じようなことが書かれていますので、読者としては、そこを信じるしかないのですが、いずれにしても、これくらいは裏を取る作業は必要でしょう。

年に1冊も自腹で、書籍を購入することもない、「バカ動画・エロ動画」、「バカ漫画」しか見ない階層の人たちには、関係の無いお話ですが。。。

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