2022-02-16、
本日の書籍紹介は、
発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法 岡田尊司 (著)です。
本当は、「グレーゾーン」ではなく、ASD(自閉症スペクトラム症)の様に、自閉症も高機能自閉症もDSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)の規定で一緒にした、スペクトラムつまり、「連続体」と言った言い方のほうが良いのではないかと考えます。そして「脳機能」の状態は、白と黒の中間という範囲ではなく、グラデーションの様に連続体(スペクトラム)の状態になっている様に思います。
身体で指が1本有る無いと違い、検査の判定では発達障害と云う判定が出なくても、脳ですので何も見えないが、同じ症状が出ていて生きにくい生き方をしていれば、どこかに問題があるのでしょう。そして、長年この件に関して調べて文献を読んで人を観ていると発達障害(ADHD、ASD、学習障害)、人格障害、愛着障害など、DSMの分類自体が合わないように私も思います。なぜなら、特徴が被っている場合があまりにも多く、「これだ」と云う風に当たらないのです。
そうです。もっと生まれつきの細胞レベルの遺伝子工学、IQ(知能)、脳神経細胞学を駆使し、生後の劣悪な養育環境による脳神経細胞と脳内ネットワークの変性なども考慮に入れて違いを分類しないと訳が分かりません。
現代日本社会の中で「引きこもり」や「不登校」なども、このようなグレーゾーン(連続体)の人たちがたくさん潜んでいることは明白なのですが、上手く改善できる場合とそうでない場合の差が激しすぎて、対処方法が何が正解で何が不正解かが分からない状態が続いているのでしょう。一人一人違いますので、症状も千差万別なのです。
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ただ、IQ(知能検査)テスト(児童用と成人用がある)を実施すれば、言語理解、知覚推理、動作記憶(ワーキングメモリ)、処理速度の4つの項目での「でこぼこ」が判明すればある程度の事は分かるようです。 児童用の知能検査「WISC-Ⅳ(ウィスクフォー)検査」
このIQテストも、ボーダー(境界知能:IQが70から85くらい)の人達が、人口の2割程度いると言われています。ですが、知能検査で、問題なしと判定され、認知機能が低いのですが、健常者と見分けがつかなくなり、「忘れられた人々」として、普通の学校でも、困っている子供たちがたくさん居ると言っています。
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<補足説明1> 児童用の知能検査「WISC-Ⅳ(ウィスクフォー)検査」
全般的なIQ(全検査IQ)と、4つの下位検査指標が算出され、4つの群指数に偏りがないかどうかが重要になります。
・言語理解 指標
言語による理解力・推理力・思考力に関する指標です。
・知覚推理 指標
視覚的な情報を把握し推理する力や、視覚的情報にあわせて体を動かす力に関する指標です。
・動作記憶(ワーキングメモリー) 指標
一時的に情報を記憶しながら処理する能力に関する指標です。
・処理速度 指標
視覚情報を処理するスピードに関する指標です。
クルマを運転するのは上手なのだが、事務仕事が「とろい」のは、処理速度は良いが、動作記憶が低いのでしょう。
発達障害などの検査では、ほぼ、この知能検査を行うのでしょう。私は、今まで、症状で判断してきましたが、この点が重要だと云う事に本書を読んでいて実感しました。そして、グレーゾーンを判断する上でも重要な指標になるのです。
<補足説明2> ワーキングメモリ
ワーキングメモリと書きましたが、コンピューターで云えば、ストレージ(HDD、SSD)からプログラムをメインメモリ(RAM一時記憶)に読み出し、処理しているのですが、先生は人間の脳で云えば、ワーキングメモリはCPU(中央処理装置)だと云っています。
ワーキングメモリは、CPUが情報を読み出して計算する場所がメインメモリ(RAM)に当るのですが、人間の脳の場合は、機能部品である前頭前野、海馬や歯状回の相互作用から生じる神経細胞の活動に当たるのでしょう。
ですので、まずは、会社組織などでは、発達障害に関わらず、おかしい奴を心療内科などに連れて行って、まずは、IQ(知能)テストを受けさせれば、どの能力がダメなのかがある程度、判明するでしょう。
<隠蔽された知能検査>
子育てにおいても、検査結果から子どもの“苦手”の原因がどの能力にあるのかを分析することができるのですが、なぜか、教育機関では、これを隠蔽してしまう。もっとうまく活用するようにしないと、親も子もなんでダメなのか分からず、問題がでてきています。
知能検査は、障害を見つける目的ばかりではなく、一人一人の子どもの特性に応じた保育・教育を行うために検査を活用すべきなのですが、これが、導入から100年経ってもまだできていないのです。
<目次>
第1章 「グレーゾーン」は症状が軽いから問題ない?
第2章 同じ行動を繰り返す人たち――こだわり症・執着症
第3章 空気が読めない人たち――社会的コミュニケーション障害
第4章 イメージできない人たち――ASDタイプと文系脳タイプ
第5章 共感するのが苦手な人たち――理系脳タイプとSタイプ
第6章 ひといちばい過敏な人たち――HSPと不安型愛着スタイル
第7章 生活が混乱しやすい人たち――ADHDと疑似ADHD
第8章 動きがぎこちない人たち――発達性協調運動障害
第9章 勉強が苦手な人たち――学習障害と境界知能
第10章 グレーゾーンで大切なのは「診断」よりも「特性」への理解
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<グレーゾーンの8つのタイプとは>
1. 同じ行動を繰り返す人たち
一つの行動パターンへの執着やこだわりがあるタイプ。
Mac Bookの上に、更にキーボードを載せて使う様な、極めてこだわりの強いやつ。
毎日、ブログを更新しないと気が済まないやつ。2. 空気が読めない人たち
ASDに多い、社会的コミュニケーション障害、認知的共感力が無いので仕方ない。3.イメージできない人たち
物事を図式化して考えることが苦手なタイプ。4.共感するのが苦手な人たち
ASDに多い、特に認知的共感力が乏しい。人と打ち解けることができない。5.ひといちばん敏感な人たち
HSPと不安型愛着スタイル。6.生活が混乱しやすい人たち
ADHDと擬似ADHD、 片付けや時間管理が出来ない。7.動きがぎこちない人たち
発達性協調運動障害、ASDタイブでも多い。8.勉強が苦手な人たち
単なる怠け癖ではなく、学習障害(LD)、知能が境界レベルの境界知能。
ちなみに、私は、この様な人たちを「発達障害」児とは決して言わず、「ロボット」と言っています。映画ターミネーターに出てくる「Tー800」の様にどんなに優秀でもプログラムされていない事は、学習しないと出来ないのです。
自分で自覚するのは、難しいが、この書籍を読めば、自分が「グレーゾーン」かどうか判断する材料になると考えます。
今回の著書は、発達障害、愛着障害、境界知能、人格障害と多岐にわたる脳の状態について、例を挙げて説明している所が良いのではないのでしょうか。かなり、まとまっていますので、脳の障害に関する事を知るには1冊だけではもちろんダメですが、かなり広範囲の知識が記載されていますので、これは読んでおく価値がある書籍です。
<岡田尊司 先生の著書>
■愛着障害 子ども時代を引きずる人々
■ネオサピエンス 回避型人類の登場
■死に至る病 あなたを蝕む愛着障害の脅威
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・「発達障害」という言葉だけが先行し、脳科学の「社会の理解が進んでいない」
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・【興味深い研究】「自閉症の現れ方は男女で異なる。隠している人ほど精神的な問題が」 以前から気になっていたことを話します。
・【書籍紹介】 発達障害と人間関係 カサンドラ症候群にならないために 宮尾 益知 (著)
・【書籍紹介】「死に至る病 あなたを蝕む愛着障害の脅威」 (光文社新書) 岡田 尊司 (著)
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