【書籍紹介】 52ヘルツのクジラたち  町田 そのこ (著)  2021年本屋大賞を受賞

2021-04-20,
本日の書籍紹介は、52ヘルツのクジラたち  町田 そのこ (著)  です。

社会問題を題材にして、2021年「本屋大賞」を受賞しました。 彼女の作品は、初めて読みましたが、今の世の中を旨く反映している作品が多いです。

私は、若い頃はたくさん読んでいましたが、ここ十数年以上、「小説」は、ほぼ読んだことが有りません。 なぜなら、他人の頭で想像したものを読んでいる暇は無いのです。読むのなら「自然科学」系の書籍を読んだ方が、若い人と違い、生い先そんなに長くはないが、自分の知らない事が分かりますので楽しいのです。

と言いつつ、今回、読んでしまった訳は、
1つ目は、書店で書籍をとりあげ、ちょっと読んでみると、発達障害、人格障害、愛着障害などのによる「脳」の障害、違いに興味がありますが、その障害の中で「愛着障害」について、被害を受けた人間がどのような状態になるのかを克明に描かれているからです。

2つ目は、先週、痛風の発作が「膝」で発生して、出歩けなくなる前に、購入して、暇に任せて読んだからでした。 実に楽しいです。本当は、小説も面白ければ読みたいのです。娘が読み終えた書籍は、興味のない振りをしていますが、必ず、読んでしまいます。

 

発達障害、人格障害などは、ほぼ、生まれつき親からの遺伝でそうなる場合が多いのですが、この「愛着障害」だけは、生後、劣悪な環境で、誰からも愛されず生きてきた人たちが背負ってしまう「脳」の変化だからです。

コロナ禍の中で、DVや虐待が、世の中で増えていますが、弱い「親」は、自分の不甲斐なさを背負いきれず、もっと弱い子供に当たり、通常ならすくすくと育つはずだが、親に虐げられ、地獄の様な環境の中で、生き続けなければならなくなる場合があります。

そんな同じ境遇のなかで育った彼女が、他の鯨が聞き取れない高い周波数(52ヘルツ)で鳴くクジラの声を聞き取るかの様に、少年に向き合った「魂」の物語です。

目次
1 最果ての街に雨
2 夜空に溶ける声
3 ドアの向こうの世界
4 再会と懺悔
5 償えない過ち
6 届かぬ声の行方
7 最果てでの出会い
8 52ヘルツのクジラたち
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▮なぜ、子供にとって、劣悪な環境になるのか
親の貧困、母親のクズ夫、義理の母、親の発達障害、人格障害、親子代々の愛着障害の連鎖などの影響により、養育者が原因で、幼少期から地獄の様な生活を強いられるからでしょう。

人間の「脳」は、幼少期からの成長過程で、徐々に、脳の配線(脳内ネットワーク:主に前頭前野、大脳辺縁系の海馬や偏桃体)が編成されて行きますが、劣悪な環境下では、それが阻害されてしまうのです。

愛着とは
幼児が、お母さんにべったりで、居なくなると泣き叫びますが、だんだん、母親が居なくても、泣かなくなるのは、幼児は養育者を、探索のための「安全基地」として使い始め、段々と慣れてくるので、安心できる存在があってこそ、安定した精神状態でいられるのも、愛着を育てる事が出来たからです。

人間がまともに成長するには、いかに幼少期の社会や親との関係が重要か、ヒトの脳の機能、いかに「脳」が、どんなタイミングで発達するのかが、脳科学の書籍を読んで認識するしかありませんが、高等教育のレベルでも、未だに教えていません。

 

そんな中で、この小説は、具体的に、どんな「クズ親」に育てられると、生きにくい生き方になってしまうのかが、よーく理解できると考えますので、じゃ、なぜこんな風になってしまうのかは、愛着障害について勉強すれば、より理解が深まると思いますので、具体例として、お勧めの1冊なのです。

読んで、ただ悲しい物語として認識するだけではなく、子供は親を選べない、獲物をいたぶる様に傍に置いて、虐待するその現実を観ることができるのです。 そして、それを他人が指摘すると、その親は逆上して、増々、子供を密かに、虐待するのです。

このように社会問題に関する書籍を読んで感動しても、なぜ、どうして、そうなるのかまで認識できるかどうかなのですが、そこまでたどり着こうとする人も少ないでしょう。

そして、ここから被害者を救い出すのは容易なことではないでしょう。 なぜなら、こんな化け物の様になった親が、子供に暴力やネグレクトで虐待しない限り、発見するのは難しいからです。

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