【書籍紹介】 「私たちの国で起きていること」 小熊 英二 (著)

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2019年10月5日、
本日の書籍紹介は、「私たちの国で起きていること」 朝日新聞時評集 (朝日新書)  小熊 英二 (著)

本書は、歴史社会学者の「小熊 英二」氏が、朝日新聞に掲載された時評集です。

久しぶりに、面白い著者に出会った気がします。

 

もう一冊、
日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学」小熊 英二 (著)を次に読もうと思います。

現代日本での生き方を「大企業型」「地元型」「残余型」の3つの類型に分けて説明しています。 60年代後半から70年代のはじめに完成したその構造を「社会のしくみ」と呼んでいます。 

「大企業型」が約26%、
毎年、賃金が年功序列で上がっていく人たち。大学を出て大企業の正社員や官僚になった人などが代表です。

「地元型」が約36%
地元にとどまっている人。地元の学校を卒業して、農業や自営業、地方公務員、建設業などで働いている人が多いです。

「残余型」が約38%
平成の時代に増加してきたのが、所得も低く人間関係も希薄という「残余型」。都市部の非正規労働者などがその象徴です。

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歴史社会学者は、「社会の変化を言語化するプロフェッショナル」そんな言葉がぴったり合致した、私ごときの感想では「流石です。。」としか言いようのない文章です。

この時評集では、二つの関心が通奏低音(つうそうていおん)となっている。

一つは社会の変動という、世界に普遍的な傾向が、日本でどう表れているかとういう関心。

もう一つは、戦後の日本の中で形成された「国のかたち」がどのように揺らいでいるのか、次の時代の新しい合意がどのように作られうるのか、という関心である。

私はこの二つの関心を通じて「私たちの国で起きていること」を書いてきた。

私の場合、保守でもなく、リベラルでもなく、右でも左寄りでもありません。 と云うより、そんなことを意識した事さえ有りませんので、本当に、どーでも良いことです。

数ページで、一遍終わる「時評集」ですので、とても読みやすく、その中に、ぎゅっと凝縮された強烈な言葉が込められています。

例えば、下記の文章は、

その変動とは、人々の個人化が進み、関係の安定性が減少していく流れである。それは、人々が固定化した関係を嫌い、自由になろうとすることで促進されている。

そこからはプラス面とマイナス面が表れる。

まさに、「変動」という事で云えば、貧乏な時代はみんな寄り添って暮らしてきたが、経済が成長して、ある適度、貧乏でも食ってゆけるようになると、核家族化してき、みんな自由になると同時に、格差が広がり、食っていけないほど貧乏ではないが、何一つ経済的に余裕のない相対的な貧困化が進んでしまう要因でもあります。社会が階層化してきて、それが固定化してきています。

 

以下、タイトルごとの文章内で、気に入っている大切な記述を抜粋してみました。

紹介した文章の前後の内容まで読まないと、意味が通じない、誤解される部分もあると思うが、後は、自分で書籍を購入して、じっくり読んで納得してください。

言葉にできない「もやもや」していることを、見事に「言語化」していますので、羨ましい限りですね。

1.外国人との共存 ずさんで不透明な壁が阻む

この国は、何を守りたいのか。「単一民族国家」を守りたがっているとは思えない。なぜなら「日本人」の記者や生活困窮者も、「自己責任」と切り捨てられているからだ。

むしろ守りたがっているのは、「ずさん」で「不透明」な状態そのものかもしれない。 ルールが不明確で、密室で決定でき、不服申し立てを許さず、責任が問われない。この状態は、上に立つ者にとっては、面倒が少ないだろう。

これぞまさしく、日本独特の「タコツボ」社会、多文化で移民に立脚するような国には、機能不全すぎて、日本は、外国人と共存するような国には、到底なれないでしょう。

「外国人労働者の受け入れの問題」、「消えた留学生問題」など、「ずさん」で「不透明」その物です。

 

2.戦争の呪縛 政治不信、逃れられぬ社会

日本では、アジアに与えた加害を重視する戦争観は定着しなかった。しかし一方で、日本軍を英雄視する歴史感も定着しなかった。定着した最大公約数的な戦争観は、「政府や軍は愚かで、非合理的な戦争だったが、民衆は被害者だった」というものだった。

 

「民衆は被害者だった」と云うのは、間違いでしょう、「民衆は愚かだった」が正しい評価でしょう。

ドイツのように「独裁者」を担ぎ上げなかっただけで、唯々、「愚か」だったのです。

だから、「民衆は、反省していない」 自分たちがやったわけではないと思っているからです。 そこが「愚か」なのです。

この「愚かさ」だけは、だれも裁けないのです。 だから同じ過ちを人類は繰り返すのです。

戦争は、一旦始まると、誰にも止めることができなくなります。 そして、それを実行に移す人間たちは、国民の命のことなどは、何一つ考えていない、「化け物」の様な行動をとるようになるのです。実に、幼稚で、残酷で、人の命のことなど、何一つ考えていない行動を次々と実行してゆく。

まさに、「狂気」の世界に支配された状況に必ずなるのですが、戦後70年、当時の戦争を体験した「老人」たちは、まだ生きていますが、「平和ボケ」しているのか、憲法9条の問題にしても、反応が鈍いように思います。

語り継ぐ前に、お前たち、戦時中、さんざん不条理な思いをして生きてきたくせに、もう、おれらには関係ないというような面をしているのか、意味不明です。 喉元過ぎれば、もう関係ないか、もうあの悪夢のような日々は、自分の生きている間は、無いだろうと、高をくくっているのでしょうね。

人間、どんなに悲惨な思いをしようと、今が良ければ、簡単に、あの「狂気」を忘れてしまうのでしょうか。そんな意味において、戦時中を生き抜いてきた人たちの頭の中をかち割って観てみたいものです。 どうなってんの? と。

思考停止」しているからこそ、ここまで生きてこられたのでしょう。

戦争の悲惨さを語り継いでも、何の意味もない。 語り継がなければならないのは、「化け物」に支配されないようするには、どうしたら良いかだけです。

 

例えですが、問題をおこして少年院に入ってきた子供たちの中には、「反省」以前の問題を抱えていて、「脳」の物事に対する「認知機能」に問題があるようです。

同じように、日本人は「空気で動く民族」ですので、「善・悪」関係なく、脳は「個」の無い「認知機能」しか持ち合わせていないのでしょう。

 

3.社会の分断 他者思う大人はどこに

「大人(たいじん)」とは、社会の責任を負い、他者を助けるだけの余裕がある人のことだ。それに対し「小人(しょうじん)」は、自分のことで精一杯の人を指す。

そして「大人」であるか否かは、資産や才覚の有無だけでは決まらない。巨万の富があるのに他人も社会も顧みない「小人」はいる。だが「子供の貧困」の前では、誰もが「大人」の役割を引き受けざるを得ない。

普通は、偉くなった人の事を「先生」と呼ぶ、特に代議士の事を。

私にとっては、まったく意味が分かりません。 自分より頭の悪い「政治家」を「先生」とは、頭が「ぼけ」ても言わないでしょう。

そして、財をなした人を観ても、社会に対して、自分の富を還元できていない人間に対しては、どんなに偉そうなつらをしていても、1ミリも尊敬しませんね。

どんなに大きな会社の社長でも、ただの「小僧」でしょう。

 

4.思考実験 最低賃金を時給2,500円にしたら

あえて言おう。フルタイムで働いても尊厳ある生活ができないレベルの対価で人間の労働が買われている状態は、人権侵害である。 人間が尊重されない社会では、経済も成長しない。

日本はこの25年、「黙々と働けば成長する」という過去の観念に縛られてきた。だがもはや、そうした固定観念の束縛から逃れるべきだ。

 

5.脱ポピュリズム 「昭和の社会」と決別を

イギリスの移民の話の中で、

「彼ら移民は最低賃金の時給7ポンド弱(約960円)で休日も働き残業もいとわない。英国人にはこんなことは出来ないでしょう」

私はこれを読んで、こう思った。それなら日本に移民は必要ないだろう。最低賃金以下で休日出勤も残業もいとわない本国人が大勢いるのだから。

2019年の「過労死等防止対策白書」を見れば、いかに「ひどい」かすぐにわかるでしょう。

働き方改革」?

「ねごと」言ってんじゃねーと言いた社会の状況が、延々と続いているのが現実です。

「日本に移民は必要ないだろう」というより、失礼だが、移民のやるような仕事で溢れているので、人口でカバーできている。 しかし、その人口も1億人を切って減少し続ければ、どのような状態になるのか、だれも予測していない。

 

2019年の「過労死等防止対策白書」が発表されています。
この白書は、厚生労働省が「過労死等防止対策推進法」に基づき、2016年から毎年公開している

国が過労死ラインとして定めているのは、月80時間の時間外労働だが、週60時間以上働いているは、397万人いる。

仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている:58.3%

■職場での「いじめ・嫌がらせ」に関する相談受付件数:8万2797件
■仕事を理由に自殺:2018人
■過労死や過労自殺:158人
■建設業:精神障害を患った現場監督の半数が自殺
■メディア業界:精神障害を患い自殺したのは全員20代

参照:https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/karoushi-2019

 

最後に、

上記の他に、静かで、強烈な言葉を並べた記述がたくさん出てきます。

社会をどう捉えているのかは、人それぞれ、どの階層に居るのかによっても、違うでしょうが、上の階層の人間は、社会的にも力もあり、変えようとは決してしない。

日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学で記載されているように

変動が起きているのは、下の階層の民衆です。 社会の仕組みで云えば残余型」の人たちです。

下の階層の人間たちは、どんどん貧窮してゆく。 上の階層の人間は、社会が乱れる、混乱する、ぎりぎりの処まで、放置する。 これが日本の現状で、このまま現状が維持さて、行くところまで、行きつくのではないでしょうか。

極端な言い方をすれば、もう、夜中、女性が一人で、夜道を歩いて帰宅することが、困難な時代になるのは、そう遠くないように思います。

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