2021年2月18日、
本日の書籍紹介は、パンデミック以後――米中激突と日本の最終選択 エマニュエル・トッド (著) です。
「エマニュエル・トッド」は、フランスの歴史人口学者・家族人類学者です。
十数年前、フランスの社会人類学者、民族学者 の「クロード・レヴィ=ストロース」の書籍を彼が亡くなった後、追悼で本屋の棚に並んでいたのを見つけて、初めて読んで非常に驚いた記憶が有りますが、私にとって、また、興味の湧く人物が現れました。 といっても、私より年上ですが、たいして変わりません。
思想と云うか、発想と云うのか、ものの考え方が、非常にユニークで、多分、他の人類学者で思想的に似ている人は居ない様に思います。 そこが良いのかもしれません。
人類学的に考えると、出アフリカを果たした「ホモサピエンス」が、「ネアンデルタール人」より体格的に劣っていたにも関わらず、なぜ人類だけが生き残ったのか?
弱さ故に、狩猟採集の時代から、土地を耕し食料を自給自足できるようになり、ネットワークを作り、集団化していった。 現代社会で、グローバル化と云っていることが、すでに数十万年前から始まっていているのですが、ここまで来ると「国」という集団の枠をどう守ってゆくのか、いなか、富める国、いまだ貧困が蔓延る国、好き勝手に囲い込む国、地球と云う小さな惑星に生息する人類が、抱える数々の問題をどう知恵を絞るのかにかかっています。
タイトルは「パンデミック以後」となっていますが、パンデミックが起こる前から、社会問題化している事柄が多々ありますので、各国が抱える問題が、パンデミックによって、それらが一層目立つように表面化しただけの話ではないでしょうか。
■パンデミック以後――米中激突と日本の最終選択
<目 次>————————————-
1 トランプ政権が意味したこと
2 新型コロナ禍の国家と社会
3 新型コロナは「戦争」ではなく「失敗」
4 不自由な自由貿易
5 冷戦終結30年
6 家族制度と移民
———————————————-
本書の面白いと思ったところを抜粋して紹介してみました。
もちろん、本書の中の抜粋ですので、一部を切り取って、あーだ、こーだという事では無いので誤解なきように。
興味のある人は、身銭を切って自分で買って読んでみてからにしてください。
■進歩した世界が抱える問題
進歩した世界が抱える問題の一つは、人々が高齢になってきたことです。 高齢者の人口増加は、先進社会のブレーキなってきました。 だとすると、新型コロナウイルスが高齢者の命を奪ったとしても、社会にとって深刻な打撃にはなりません。
私も高齢者でしょうが、新型コロナウイルスで亡くなるのは、殆んどが高齢者ですので、同意です。 新型コロナウイルスの感染のリスクに対する格差は、富裕層は、確かに少ないでしょう。 考えなくても分かりますよね。 毎日、通勤電車に乗って、稼ぎに行かなくても良いのですから。
■中国について
今の中国は中国人が自分で作った社会です。 人類学者としていうならば、中国人に自由になることを強制する気はありません。 しかし、国際社会の中では中国は抑え込まなければならない。
強烈な皮肉にも聞こえますが、地球外生命体の様な「国」が、近居に居る状態ですが、他の国と協力しないと、どうにもならない事が、歯がゆいのですが。
高齢化した国は、ちっちゃい武器を揃えるのではなく、「核」を持つのが理想的なのかもしれません。もちろん、絶対に使ってはならないのですが。
■少子高齢化は、「人口動態」上の問題
日本にとっての根本的な問題は、フランスが直面していない問題です。 つまり人口動態上の根本的な幻想。
この幻想とは、自国の問題の解決策が経済の中にあるように思っていることではないでしょうか。
少子高齢化は人口動態上の問題であって、その原因は家族関係、男女の関係、まだ十分なレベルになっていないのになかなか進まない女性の解放に根があります。これが、家族で子供を作るための条件を損なっている。
だから日本が取り組まなければならないのは、教育を受けた女性が仕事もできるし子供も持てる新しい社会を確立することです。
日本の場合は、超高齢化・少子化社会に向かっていくが、そのスピードは他の先進国を大幅に上回るものである事も、大きな問題です。
女性は、国家の為に子供を産まない。
欲しいと思っても、産める環境に無いと思えば、当然、自分を優先する。
もはや、一夫一婦制では、子供を産めないのか?
少子高齢化は人口動態上の問題であって、その原因は家族関係、男女の関係、まだ十分なレベルになっていないのに、なかなか進まない女性の解放に根があります。これが、家族で子供を作るための条件を損なっている。
人間様は、他の動物と違って、めんどくさい事だらけなのですが、「男社会」の中で、意識を変えるのは、非常に難しく、「自業自得」の状態が続く様に思います。
■トッドは、世界の家族制度を分類し、大胆にかつての家族型と社会の関係を示しています。
1.絶対核家族 (la famille nucléaire absolue)
2.平等主義核家族 (la famille nucléaire égalitaire)
3.直系家族 (la famille souche)
4.外婚制共同体家族 (la famille communautaire exogame)
5.内婚制共同体家族 (la famille communautaire endogame)
6.非対称共同体家族 (la famille communautaire asymétrique)
7.アノミー的家族 (la famille anomique)
8.アフリカ・システム (le système des familiaux africains)
非常に、ユニークな分類だと感心します。
■生物学的に言えば、
・象や熊や豹
オスは、交尾をする時だけメスに近づいて終われば、はい、さいなら。 生れた子供はメス(母親)のみで育てる。
・チンパンジーは、乱婚型で、誰の子だか分からないので、みんなで育てる。
・ヒトは、一夫一婦制が建前です。例外も在るが。
・ゴリラは、ハーレム型で一夫多婦制です。
生物学的には、ゴリラ、ヒト、チンパンジーの順で、金玉(睾丸)が大きくなっている。体の大きさではなく、「精子間競争」が激しいと大きいのです。
私が考えると、歴史人口学・家族人類学でもなくなり、人類学や生物学の世界になってしまい脱線してしまいますが、社会制度を大きく変える必要がある部分が出ていている様に思います。
最後に、
人類の数十万年の歴史の中で、「細菌」や「ウイルス」が蔓延したくらいでは、人類は「絶滅」しませんので大丈夫でしょう。 むしろ、ウイルスのおかげで、人類は進化してきている。
それより、日本の場合、「人口動態」上の問題を考える方が、大切なように思います。
スマホで、バカ動画、エロ動画、バカゲーム、SNSをやっている暇があるなら、女・子供の様に半径5m以内の世界ではなく、大きな視野で、自分たちが暮らしている社会を見つめ直す事も、大事なような気がします。
自分たちの暮らしている社会構造も知らない「社会知らず」が、「世間知らず」と云うのではないでしょうか。
■半径5m以内の世界から抜け出すために、まず、お勧めの2冊です。
・【書籍紹介】 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 小熊 英二 (著)
・【書籍紹介】 「私たちの国で起きていること」 小熊 英二 (著)
■社会学を学ぶ上で、強烈な人、「ジェンダー」に関する問題なら、東大の「上野 千鶴子」先生の書籍が最高です。
■女ぎらい 上野 千鶴子(著)
男どもは、メッタ斬りにされる最高傑作です。
■ナショナリズムとジェンダー 上野 千鶴子(著)
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