【書籍紹介】 日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学   小熊 英二 (著)

three people sitting in front of table laughing together

2019年7月28日、
本日の書籍紹介は、「日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学」   小熊 英二 (著)です。 サブタイトルは「日本を支配する社会の慣習」です。

主に、雇用の社会学的な側面から見た「日本社会のしくみ」が記載されています。
世の中には、いろいろな問題を抱えていますが、それが少数派なのか、多数派なのか、声がデカいのか、小さいのかで、影響力が全然違いますが、見えない階層が分断して存在していますので、世の中は簡単には変わりません。

SNSの時代になり、色々な、薄っぺらな情報が拡散しやすくなっていますが、よほどの正義にかかわる問題でないと、影響力が全然違います。大体はワーッと騒いで終わりです。

色々な視点から、日本の雇用の変遷を説明していて、私的には、データが多く、分かりやすいのですが、社会の中で、支配する者、支配される者たちが、グダグダに改革を進めても、どこかで歪が生じて、中々上手くゆかない、この状況はいかんともしがたいが、これが社会なのかもしれません。 

「神の手」ではなく、人間の「脳」の都合という流れが存在して、誰も予測できない。
なぜなら、人間の「ご都合」の集合体だからでしょう。

なるようにしかならない、これが世の中の空気、誰もが逆らいたいが逆らえない。
唯一、逆らえるというか、平然としていられる人間は、人の金、親の金を当てにして、じっとして暮らしている人でしょう。 永遠ではないが、世の中がどう変わろうと、食いつないでゆくでしょう。 本当に食えなくならない限りは、今のままじっとしているので、今のところ問題ないと思えるところが、社会にとっても都合が良いのです。

■「日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学」   小熊 英二 (著)

– 目 次 –
第1章 日本社会の「3つの生き方」
第2章 日本の働き方、世界の働き方
第3章 歴史のはたらき
第4章 「日本型雇用」の起源
第5章 慣行の形成
第6章 民主化と「社員の平等」
第7章 高度成長と「学歴」
第8章 「一億総中流」から「新たな二重構造」へ
終章 「社会のしくみ」と「正義」のありか
————————————-

 

本書が検証しているのは、雇用、教育、社会保障、政治、アイデンティティ、ライフスタイルまでを規定している「社会のしくみ」である。
雇用慣行に記述の重点が置かれているが、それそのものが検証の対象ではない。そうではなく、日本社会の暗黙のルールとなっている「慣習の束」の解明こそが、本書の主題です。

■日本の社会は、「大企業型」、「地元型」、「残余型」の3つの類型によってできていると。その比率は、「大企業型」26%、「地元型」36%、「残余型」38%と推定される。

この3つの類型に分けて、国民を階層構造に分類すると、世の中で起こっていることが、3つの類型では、不満の持ち方が違うでしょうね。

こんな階層構造で分類で区別すると、今まで見えなかったものが、見えたり、見えなくなったりすることが認識できます。

 

■「大企業型」の場合は、日本的経営の特徴は、「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」の3点であるが、これが崩れてきているといわれているが、しかし未だに維持されている。

学生に求める人材も、何を学んだかではなく、どの大学に入学できたのか、偏差値でしか評価していない。

一方では、
先日、テレビ東京の番組で、経団連加盟の大手トップが、「企業が求める人材は、どう変化したか」で、トヨタの副会長が、「グローバル化に対応できる人材、ITリテラシーの高い人材」これが国内で足りなくて、競争で取り合いになっている状況になっている。そして、これを大学に助けてももらい、連携してゆくことが必要と。。。

本当に、今更ながら、空いた口が塞がりません。 遅い!のです。 気が付くのが。
今まで、学生を「偏差値」でしか見ていなかったくせに、今更です。

■これから、増々、知識集約型の高度な情報処理能力が、必要な時代になってきます。

学生の皆さん、「ジェネラリスト」より、「スペシャリスト」を目指して専門分野を在学中に勉強して、将来を目指したほうが、くいっぱくれがないように思いますが、いかがでしょうか。

現在、人工知能ブームが到来して、2040年ころに「シンギュラリティ」が起こると言われていますが、今までと同じ、会社組織での労働環境なら、まだまだ先の話でしょう。

片や、GAFA(ガーファ):Google、Amazon.com、Facebook、Apple Inc.の4つの主要IT企業が、ネット上の巨大な「プラットフォーム」を利用して、富やデータを集中して、どんどん巨大化して、力を蓄え、人の心まで左右する気配さえも見せています。その手助けになるから、人工知能の開発にも莫大な資金が投入されているのでしょう。

 

■日本の場合、「大企業型」26%、「地元型」36%、「残余型」38%と言われていますが、どこがメイン「エンジン」なんでしょうか? それともハイブリットエンジンか?

それとも、「大企業型」26%が「頭」で、「地元型」36%、「残余型」38%が、手足・胴体なんでしょうか。年収が200万円台でも、とりあえず、食ってゆければ、暴動を起こすような問題を起こすべくもなく、経済格差の広がる中、選挙が一番いい例ですが、世の中、政治にさえ関心を持たず、風呂で屁をこいた位の文句しか言わずにひっそりと生きてゆく。

「士農工商」の時代でいえば、百姓は「生かさず殺さず」、一揆を起こさず、そのまま政治にも無関心でいてほしい。。。。これが、支配者、権力側の人間の思うところでしょう。

人類学的には「ホモサピエンス」は、弱さ故に、集団で生活するようになり、生き残ってきましたが、何万年たっても、民主主義などと言っても、何も変わらないのだなーと思います。

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