【書籍紹介】「現代優生学」の脅威  池田 清彦 (著)

2021-04-14、
本日の書籍紹介は、「現代優生学」の脅威  池田 清彦 (著)

戦後、一度は封印されたはずの「優生学」の忌わしい歴史と危うい現状について、警鐘を鳴らし、かりやすくまとめた一冊でしょう。

優生学」。。この言葉を聞くと、ちょっと憂鬱(ゆううつ)な気分になります。現代社会の中で叫ばれる様になってそんなに経っていない、多様性で云えば「ダイバーシティー」、「ニューロ・ダイバーシティー」、「LGBTQ」なども関係のある事柄で、生物多様性ももちろん有りますが、人類にも多様性が必要なのです。

地球の46億年の歴史の中でも、地球環境が激変しても、全て絶滅せずに、この多様性があったからこそ、これだけの生き物が地球と云う惑星で暮らしています。

作為的に、優秀な人間だけを選別しようとする思惑を持っているのは、人類だけです。

 

優生学とは、一般に「生物の遺伝構造を改良する事で、人類の進歩を促そうとする科学的社会改良運動」と定義される。

まず、優生学は、2つに分類されています。

消極的優生学子孫を残すに相応しくないと見なされた者が子孫を残すことを防ぐ。

「望ましくない形質または遺伝的欠陥を伝達しそうな人々の生殖を規制しょう」という考え方。 ナチスの人種政策、戦後日本の伝染病政策(ハンセン病)など。

 

積極的優生学子孫を残すに相応しいと見なされた者がより子孫を残すように奨励する。

「すでに生まれた人間ではなく、生まれる前の段階でなんらかの操作を加え、優秀とみなされる資質を備えた人間を多く生むようにする」という考え方。 現代は、クリスパーキャスナインなど、「遺伝子操作」技術が進歩して可能になってきていますので、危ないのです。

 

これまで人類は、優生学的な思想により「障害者や移民、ユダヤ人といったマイノリティへの差別や排除、抹殺」を繰り返してきた。

ドイツでは、ユダヤ人虐殺の問題以前に、障碍者に対する迫害がひどかったのですが、このことは、あまり知られていないのです。

第二次世界大戦の終結以降も、アメリカ、北欧、日本でも障碍者に対する不妊手術が行われるなど、福祉政策の一環として優生学的施策が続いたのです。しかし、1970年代以降、優生学は大きく批判されるようになり、「民族衛生」や「絶滅政策」といったナチスの政策と結びつけて認識されるようになり、廃れた。

集団に対する優生学・思想は廃れたが、個人の自己決定としてどのような子供を産むかという問題は新しい優生学として続いている。

 

日本では「ハンセン病患者の隔離政策」がその典型といえるのです。

現代的な優生学の広がりに大きく寄与しているのが「科学の進歩」や「経済の低迷」、そして「新型コロナウイルスの感染拡大」である。

優生学の現代的な脅威を論じています。

■「現代優生学」の脅威

目次
第1章 甦る優生学
第2章 優生学はどこから来たのか
第3章 ナチス・ドイツの優生政策
第4章 日本人と優生学
第5章 無邪気な「安楽死政策」待望論
第6章 能力や性格は遺伝で決まるのか
第7章 “アフター・コロナ”時代の優生学
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1章から4章までは、近代における優生学の概観。社会進化論やアメリカの移民問題、ナチスの人種政策、戦後日本の伝染病政策など、歴史的にみる。

5章から7章までは後半は、現代日本に関わる問題を取り上げ、安楽死を巡る議論や政策、出生前診断として、知能や病気を遺伝から判断して操作しようとする風潮、さらには老人などへの社会的コストなど、経済、財政状況などが、危うくなれば、出てこないとも限りません。

現在、優生学がかつてっとは異なる相貌(そうぼう)で一人歩きをしていると言っています。

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