【書籍紹介】世界インフレの謎 (講談社現代新書) 渡辺努(著) 日本の賃金が上がらない理由は?

2022-11-12、
本日の書籍紹介は、世界インフレの謎 (講談社現代新書) 渡辺努(著)です。

この問題が、一番、気になるが、どうしようもない状態が延々と続いていますし、いち労働者がどうにかできる問題ではないのです。
・「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」
・「日本の賃金が上がらない理由」
・「日本の中小企業の労働生産性が低い理由」

この先、過去、オイルショックの時の様に、スタグフレーション(経済活動の停滞と物価の持続的な上昇(インフレ)が併存する状態)が起こって来るのか?

 

1.なぜ? 日本だけ、デフレ状態で、経済が停滞してしまうか!

1)一番大きな要因は、「非効率な産業構造」だと言われています。

 

高度経済成長期から引きずっている時代錯誤な「産業政策」、「非効率なシステム」、政財界、エコノミストのリーダーたちの多くは経済低迷の要因を「産業構造」と言わず、それを「労働者」へと押し付けています。 このあまりに「残念な勘違い」を代表しているのが、「働き方改革」です。

 

2)「非効率な産業構造」とは

 

実は日本経済の低迷も、女性活躍や有給取得率でもそうだったように、最後は必ず「小さな企業が多すぎる」という問題に突き当たるのです。低賃金、少子化、財政破綻、年金不足、最先端技術の普及の低さ、格差問題、貧困問題……様々な問題の諸悪の根源を突き止めようとすると「非効率な産業構造」という結論にいたるのです。

それはつまり、日本が他の先進国と比べて、経済効率の低い小さな企業で働く人の比率が圧倒的に多く、そのような小さな企業が国からも優遇されている事です。

実は日本は、生産性の低い「中小企業天国」と呼べるような産業構造になっているのです。

 

3)このような「産業構造」が出来上った時期

 

現在のような「他の先進国と比べて小さな企業で働く人の割合が多すぎる」という産業構造が出来上がっていったことがよくわかります。

では、その時期はいつかというと「1964年」です。

この年、日本はOECD(経済協力開発機構)に加入しましたが、その条件として要求されていた「資本の自由化」でした。当時の日本では、資本が自由化されれば外資に乗っ取られるかもしれないという脅威論が唱えられ、護送船団方式など「小さな企業」を守るシステムが続々と整備されました。

つまり、1964年というのは、日本を「低生産性・低所得の国」にした「非効率な産業構造」が産声を上げたタイミングなのです。

派遣法の改正により労働市場の自由化を実施したが、小さい会社にとって都合の良い事ばかりでしょう、正規社員ではなく、非正規を雇えば、いつでも首を切れますし、コストも安く雇える。われわれ国民は、労働者で消費者でもあります。

▮低賃金

例えば、小さな同じような店が地域に沢山あれば、値段を上げれば、消費者は別の店に逃げてしまうから、値段を上げられない、当然、賃金も上げられないでしょう。賃金が上がらない原因は、物価が上がらない事にあります。安く雇えれば(低賃金)、値段を上げずに済むが、儲からないの繰り返しで何とか生き残る状態が続いている。日本だけこの「デフレ」状態から抜け出せない。

来春から、少数の「大企業」ですが、NTTなどは、初任給を上げる動きを見せています。人材確保の面からいっても必要ですが、「中小企業」にまでは波及しないでしょう。

▮最先端技術の普及の低さ

IT関連の普及においても、これは労働者も会社も遅れているのは、長年、システムを担当していて実感できることが多いのですが、ITを導入しようとしても、如何せん、予算が足りないし、幹部が無能で、付け焼刃でシステムを構築してしまい、大切な情報が分散してしまい、統合できず、役に立たないシステムが複数出来上がってしまう状態を解消することができないでいる。

▮格差問題、貧困問題

ある産業部門でが、外国人労働者が必要になっている場合はあるが、日本では外国人労働者は要らない。
なぜなら、外国人労働者が見向きもしない低賃金の労働でも、いくらでも働く日本人がたくさん居るからです。

非正規の労働者を雇えるようになった恩恵は、大企業もさることながら、日本の小さな会社にとって、正規社員を雇い入れなくても良いようになったことが、大きいのではないでしょうか。
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■世界インフレの謎

第1章 なぜ世界はインフレになったのか――大きな誤解と2つの謎
1.世界インフレの逆襲
2.インフレの原因は戦争ではない
3.真犯人はパンデミック?/より大きな、深刻な謎
4.変化しつつある経済のメカニズム

第2章 ウイルスはいかにして世界経済と経済学者を翻弄したか
1.人災と天災
2.何が経済被害を生み出すのか――経済学者が読み違えたもの
3.情報と恐怖――世界に伝播したもの
4.そしてインフレがやってきた

第3章 「後遺症」としての世界インフレ
1.世界は変わりつつある
2.中央銀行はいかにしてインフレを制御できるようになったか
3.見落とされていたファクター
4.「サービス経済化」トレンドの反転――消費者の行動変容
4.もう職場へは戻らない――労働者の行動変容/脱グローバル化――企業の行動変容
5.「3つの後遺症」がもたらす「新たな価格体系」への移行

第4章 日本だけが苦しむ「2つの病」――デフレという慢性病と急性インフレ
1.取り残された日本
2.デフレという「慢性病」
3.なぜデフレは日本に根づいてしまったのか
4.変化の兆しと2つのシナリオ/コラム:「安いニッポン」現象

第5章 世界はインフレとどう闘うのか
1.米欧の中央銀行が直面する矛盾と限界
2.賃金・物価スパイラルへの懸念と「賃金凍結」
3.日本版賃金・物価スパイラル
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2.中小企業労働者と地方公務員などの現状

日本の「中小企業」は、421万企業のうち99.7%を占め、とりわけ、小規模企業は我が国全企業数の9割弱を、また雇用の1/4をそれぞれ占めていますが、小さい会社が、自由に乱立すると、自由で良いが、金の無い(予算の少ない)会社ばかりで、技術革新も起こせず、じっと、低価格で我慢する経営が、延々と続くのでしょう。 そんな中、給料(賃金)が上がらないので、当然、子供を保育園に預けて「嫁」に働いてもらい、家計の不足分や余剰金を増やす方策を取らざるを得ない状況になっている。

こんな状態ですので、そんなに貧乏か? と云えば、コロナ過でも、街はヒトで溢れているし、不景気には観ません。もちろん、格差もありますので、生活が「カツカツ」の人も居るでしょうが、全体を観れば、なんだか、小さいお店の方が、労働生産性の低い企業が、低賃金で生き残っているような感じがします。

「カツカツ」の生活を免れるには
・子供の居る夫婦は、2人で働けば、何とか生活が「カツカツ」でなくなる程度。
・独身は、自分しか居ないので「副業」をするしか、手取りを増やすことができませんので大変ですが、頭を使わないで生活してきた奴らは、結局、体を使い労働するしか手はない。

格差社会、相対的貧困問題がありますが、全体的に観れば、今の親の世代が、まだ金を持っているのでしょう。札幌の私立の大学の駐車場を観れば、すぐに分かります。 駐車場のクルマの台数が多い事に気が付きます。学生の分際で、軽自動車ではありませんよ、200万円を超える立派なクルマで通学している「クソガキ」どもがたくさん居ます。

私も、学生時代から、クルマやバイクに乗っていましたが、アルバイトで貯めた数十万円の軽自動車やバイクです。 新車が買えたのは、社会に出て、しばらくしてからの事です。

このように、社会の中で、ある一定の階層以上の家庭(親)は、まだ、クソガキに車を買い与える余裕がありますので、大丈夫でしょう。

何が大丈夫かって? そんなの知らんがな。

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