【書籍紹介】 思い出せない脳   澤田 誠 (著) 脳の「いい加減」さこそが人類を進化させた

2023-05-28、
本日の書籍紹介は、 思い出せない脳   澤田 誠 (著)  です。

この書籍は、主に「記憶の謎」について記載されていますが、澤田先生は、脳科学の研究分野でも脳神経細胞より、もう一つの脳、「グリア細胞」の一つの「ミクログリア細胞」について研究している方ですので、通常の脳科学の書籍に比べ、色々な角度から記載されていますので、グリア細胞の大事な働きも含めて説明していますので面白いというより、分かり易いのです。

脳の仕組みについては、脳神経細胞だけでは、説明のつかない部分が沢山ありますので、難しくはなく、おおざっぱではあるが、エビデンスに基づいて説明が何だかうまいのです。多分、脳科学の書籍で、脳神経細胞について記載された書籍をたくさん読んでいれば、腑に落ちる点が多々あるでしょう。

以前から日本人は「睡眠不足」と言われていて、睡眠の質を上げるための「how-to」が流行っていますが、じゃなぜ睡眠が大切か、脳科学的に、どうなっているのかという知識が欠落しているでしょう。 寝ている間、脳は活動停止しているかと云えば、そうではなく、寝ている間にこそ「脳内」では、神経細胞、グリア細胞朋と共に記憶の定着、脳内の掃除などを懸命に行っているのです。

もう一つ、恐竜の時代から脳が発達して、大脳辺縁系(辺縁系の側坐核、扁桃体、海馬など)の上に大脳が乗っかっています。大脳新皮質の中でヒトが発達した「前頭前野」が、辺縁系からわきあがる情動のコントロールしているのですが、これを分かりやすく、身近な「記憶」をメインに脳の各部品の働きが分かる様に説明されていますので、何冊も書籍を読まないと分からない脳の基本的な仕組みを理解するには、ちょうどいいでしょう。

■思い出せない脳  澤田 誠 (著) 

目次
序章  記憶力が未来を決める
第1章 記憶を作れないと、どうなるか
第2章 情動が記憶を選別する
第3章 睡眠不足が記憶の整理を妨げる
第4章 抑制が働いて思い出せない
第5章 使わない記憶は変容し、劣化する
第6章 記憶という能力の意味
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▮「認知予備能」を持つ人の特徴とは?

高齢者の死後脳の解剖研究から、明らかに「認知症」を発症しているだろうと思われる脳の状態でも、生前はまったくその症状が認められなかったという例が報告されました。
脳の損傷や変性があっても、柔軟で豊かな脳であれば、認知機能が保持される「認知予備能」があると考えられるようになりました。

認知症や加齢で細胞が死んでしまっても、周囲の細胞が代わりとなることで、認知機能が保たれるのだろうと考えられますが、認知予備能の脳科学的な詳しいメカニズムはまだ解明されていませんが、それは、高齢になっても人との交流を絶やさなかった人に見られることが分かっています。人との交流は脳の複数の部位を活性化させます。専門的で高度な仕事をしているだけでは、脳は限られた箇所しか使われません。長い間使われなかったシナプスは刈り取られ、細胞も死んでしまいます。

そうです、使わなければ、シナプス(脳神経細胞同士をつなぐ部分)は、グリア細胞に食べられて切断します。ですので、使っていない部分の脳を活性化させるには、一番「メンドクサイ」人付き合いをして交流すれば、自ずと、使っていない部位を活性化させることができるので、例え、アルツハイマーなどで「脳神経細胞」がダメになっても、予備がたくさんあるので、それが代替えしてくれるのでしょう。

最悪なのは、年に1冊の書籍も読まない、人付き合いをして交流することも無い、ASD(自閉症スペクトラム症)グレーゾーンの様な人間は、速攻、認知症が発病すれば、脳細胞がただ死滅するだけの状態に陥ってしまうのでしょう。

 

▮人間の作った「コンピューター」と「脳」が、大きく違う点

人間の作った「コンピューター」と「脳」が、大きく違う点は、正確性、再現性で、脳は呼び出す度にデータが変わってしまうところです。 記憶と忘却(消去)のコントロールが自動で行われています。
脳の情報処理は、ある意味、とてもいい加減です。このいい加減さが生き延びた理由の一つです。

人間も人工知能(AI)も誤った情報を入手していれば、嘘をつく、どちらも、いい加減な要素を持たざるを得ないのす。更に言えば、人間は意図的に嘘をつくが、AIは収集した情報を判断できずに出力しているだけでしょう。

▮澤田 誠著者プロフィール
1958年香川県生まれ。
東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程生命化学専攻修了。理学博士。
専門は神経化学、神経薬理学。米国国立衛生研究所ポストドクトラルフェロー、科学技術振興事業団「さきがけ研究21」研究員、藤田保健衛生大学(現 藤田医科大学)総合医科学研究所教授等を経て、2005年名古屋大学環境医学研究所教授に。2012年同所所長に就任。
脳の免疫機能を担うグリア細胞の一種「ミクログリア」の研究を20年以上にわたり行っている

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