【書籍紹介】 ヒトは「いじめ」をやめられない 中野 信子 (著)

woman, sad, portrait

2017年10月3日、
本日の書籍紹介は、 ”ヒトは「いじめ」をやめられない”  中野 信子 (著)

脳科学者、中野 信子さんの最新著書です。さらっと、2,3時間で読めてしまう、約190ページの小学館の新書です。

どうして「いじめ」やめられないのか、その原因と対策はなど記載されていますが、それより、この書籍を読んで、つくづく考えてしまうのは「神経伝達物質」が影響する「無意識の行動」と「人間の脳」の多様性とです。

「無意識の行動」と「人間の脳」の多様性さえ理解されていないのに、「いじめ」は無くならないのです。

ヒトは「いじめ」をやめられない

— 目 次 —
第1章 いじめの快感
第1節 いじめのメカニズム

第2章 いじめに関わる脳内物質
第1節 オキシトシン
第2節 セロトニン
第3節 ドーパミン

第3章 いじめの傾向を脳科学で分析する
第1節 いじめられやすい人の特徴
第2節 いじめがより深刻化するとき
第3節 男女のいじめの違い
第4節 学校現場のいじめの現状

第4章 いじめの回避策
第1節 大人のいじめの回避策
第2節 子供のいじめの回避策

 

1.人間は、自分の意志だけで行動していないことがよくわかります。

「いじめ」について書かれていますが、最後に読み終わると、やはり、人間は、自分の意志だけで行動していないことがよくわかります。

1)「脳」が使うエネルギーの内訳です。

・意識活動に5%
・脳細胞の維持、修復に20%
・無意識活動に75%

意識活動に、わずか5%しか使われていません??
脳が消費するエネルギーは、身体全体の約20%

 

2)脳を支配している物質は、脳内ホルモン(オキシトシン、セロトニン、ドーパミン、テストロテン等)によって、人間の行動を無意識の中で支配しています。

例えば、オキシトシンは脳の奥で作られますが、子供を産むときに出てくるホルモンで、子宮を収縮される作用もあります。 絆ホルモンともいわれています。大切なものを守ろうとするホルモンでもありますが、強すぎると、他人を排除しようとする行動にもつながります。

また、思春期など、男性ホルモンのテストロテンなどは丁度いい、バランスで働かない時期もあります。

3)人工知能と決定的に違う処

ここが、人工知能と決定的に違う処で、もし、人工知能を人間に近づけようとすると、脳内ホルモンの様な作用を及ぼす、仕組みを「人工知能」の中に、組み込まないと、高貴で醜い人間に決して、近づけないでしょう。

この様に思うほど、人類が集団で生活する上で、必要な能力でもあり、邪悪な能力でもある特性を身に付けざるを得ない、天国と地獄の様な、相反する二面性を抱えてしまった生き物の様な気がします。

・妬み(ねたみ)、嫉み(そねみ)、僻み(ひがみ)の感情
・日本独特の村社会(タコツボ社会)からくる、激しい「同調圧力」の強さ

上記の事柄は、人工知能を作る上で、重要な「味付け」の部分に当たるでしょうね。

 

4)サルなどの動物の世界では、「いじめ」はなかなか起こらないようです。 

なぜなら、その集団に「ヒエラルキー」がしっかりしているからだそうです。 サルの世界でも、親サルのヒエラルキーが子供にも影響するので、もし上位の猿の子供をいじめると、必ず「仕返し」されるのでしょう。

かたや、人間社会では、サルより知能が発達していても、「いじめ」をやってしまうのは、教育のせいでしょうか? 「みんな平等だよ」が合言葉ですので、サルより知能が高くても「いじめ」合戦が始まります。

本当は、学校でも「みんな平等だよ」が建前だけれども、社会の中は「不平等が沢山あるんだよ」という事をちゃんと中学生のころから教えるべきです。

 

2.ニューロダイバーシティ(神経構造の多様性)です。 

ニューロは「ニューロン(神経細胞)」、ダイバーシティの意味は「多様性」

「人間、同じ「脳」を持った人間はいない」という事をどう認め合うのかだと思います。

「発達障害」、「人格障害」、「愛着障害」、「LGBT」など、生まれ持ってきたもの、劣悪な養育環境で、脳が壊れてしまったものなど、この「多様性」をどう考えるかです。

学校教育の中で、そろそろ、道徳教育も良いが、「脳科学」から分かってきたことも、ちゃんと教えてゆくべきです。 人間社会では、「道徳教育」だけでは、限界があります。

 

3.しかし、現状は、悲惨な状況です。

 

1)「最下層」の国民

新聞も雑誌も書籍も読まない、テレビ、ネットしか見ていない最下層の国民は、「脳」の仕組み、障害などについての知識が、学校でもやりませんので、何も身に付いていません。

現在では、本屋さんに行って、この関係の書籍を探せば、探さなくても、腐るほど出版されています。 なにも、「精神分析医」に成れって言っているのではありません。

例えば、発達障害(自閉症、広汎性発達障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、LD(学習障害))、精神障害では無いがパーソナリティ障害(精神病質(サイコパス)解離性同一性障害、境界性人格障害、自己愛性人格障害)、愛着障害など。。。脳の機能障害に関する文献は、書店に行けば、山のように、腐るほど有ります。

ですので、書籍さえ、自腹で、年に1冊も読まない「最下層」の国民には何も知りわたっていないのです(富の最下層ではなく、頭の中身が最下層と云う意味)。

「無知は罪悪なり」と云う言葉がありますが、この言葉の意味を理解していない「最下層」の国民が、多勢に無勢を占めている。

 

2)地球100周分以上遅れている人達が、まだまだ大勢いると云う現実

先日、幼稚園の先生たちが、職員室で、他人の事を「血液型」で、あれやこれやと、大きな声で分かったようなことを分析しているのだか、「いまどき! 血液型」で何が分かるの? だいたい、血液型で判断するのって日本人だけでしょう。。。。

「なに?B型は人の話を聞いていない」。。はあ?。。先生「頭のレベル低すぎ」、地球100周分以上遅れているのです。

幼稚園の先生でも、このレベルですので普通のお父さん、お母さんは、「発達障害」など理解できるレベルに達していないのです。人の性格を未だに「血液型」で判断している国民ですので、脳機能の違いなど理解できるレベルにないのです。

 

3)脳の障害「発達障害」、「人格障害」、「愛着障害」、「LGBT」についても、ちゃんと、学校教育の現場で教えるべきです。

全てではないが、障害を背負った子供たちが、必ず存在するのですが、このような子供たちが、いじめられる傾向にあります。反対にいじめの加害者にもなります。

社会に出て、職場の中では、ちょっと、扱いに困ってしまいますが、少なくても、学校の中では、勉強の邪魔にならなければ、排除される対象では、断じて有りません。

発達障害、人格障害、愛着障害などの知識は、学校を卒業して社会の中で働いていても、「学習意欲」の低いレベルの大人たちには理解するのは難しいと思いますが、世の中には「脳」の配線が、生まれつき、または劣悪な生活環境の中で脳が変化することをちゃんと授業で教えるべきです。

 

関連記事
【書籍紹介】「いじめは生存戦略だった!?」 進化生物学で読み解く生き物たちの不可解な行動の原理」

【書籍紹介】「脳の誕生」大隅 典子 (著)  神経細胞とシナプス間のネットワークの情報伝達

【書籍紹介】脳の意識 機械の意識 – 脳神経科学の挑戦 (中公新書)

【書籍紹介】子どもの脳を傷つける親たち

「記憶を思い出すための神経回路を発見」 脳の謎についての研究成果です。

 

コメント