2021-11-14、
本日の書籍紹介は、「タテ社会と現代日本」ですが、著者の社会人類学者で東京大名誉教授の中根千枝(なかね・ちえ)さんが、2021年10月12日に老衰のため、お亡くなりになりました。そして享年94歳でした。
研究者ではないが、最近、亡くなられた「瀬戸内寂聴」さん、占い師?「細木数子」さんなどは、大変有名な方たちで、良くも悪くも波乱万丈の人生のなかで、多くの日本の「愚民」の心の支えになった方たちですので、追悼の意を表します。
さて、十数年前、フランスの社会人類学者「クロード・レヴィ=ストロース」氏の追悼の書籍が目に留まり、初めて「人類学」というジャンルに興味を持ち、彼の書籍を手にしましたが、中根先生の書籍も生前には拝読していませんでした。 またしても、私は著者がお亡くなりになってから拝読する書籍が多くて、まだまだ「良書」を自分で探し当てる事もできないほど未熟です。 中根先生は、英国のロンドンで社会人類を学ばれていた頃、なんと「レヴィ=ストロース」氏とも会っているのです。
「人類学」は、人文科学、社会科学、自然科学まで多岐にわたり根を持つ学問で、我々「人類」に関しての総合的な学問なのです。
人類はどこから来たのか? なぜ、「ネアンデルタール人」が滅んで、「ホモサピエンス」だけが生き残ったのか?と云う、人類の進化の謎を追う自然人類学、考古学もあるが、文化、社会的な側面から人類を研究する分野もあり、非常に多岐にわたるのです。
自分は、何者なのか?
興味を抱く、高い知能を持った人には、興味深い学問ではないかと思います。
▮「タテ社会と現代日本」 『タテ社会の人間関係』著者の最新刊です。
現代新書既刊3部作『タテ社会の人間関係』、『適応の条件』、『タテ社会の力学』累計170万部超のベストセラーシリーズ第4弾が、最後になりました。
<目次>
第一章 タテの関係とは
第二章 タテ社会と「いま」
第三章 「タテ」の発見
第四章 これからのタテ社会
エピローグ 場は一つとは限らない
附録 日本的社会構造の発見
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現代日本の抱える問題を「タテ」の理論を使って読み解く52年目の続編です。
▮種々の社会問題が発生する理由 日本は「タコツボ社会」と言われている。
・長時間労働をもたらす小集団の封鎖性。
・非正規・正規雇用問題と「ステイタス・コンシャス」。
・家族という小集団が招く家庭内虐待問題。
・「場」の序列意識から生まれる新参者へのいじめ。
・タテ社会のなかの女性の社会進出……
▮「生産性が向上しない」理由でもある、このタテ社会の人間関係
・終身雇用制が崩れても、なぜ先輩・後輩の関係は変わらないのか?
・日本の組織で上司の上司に告げ口をするのが許されない理由とは?
・なぜ序列の意識なしに席に着くこともできないのか?
・『タテ社会の人間関係』から50年超、著者がいま感じることとは?
現代社会と向かい合うための、「タテ社会」入門書です。
日本のしょうも無い例を挙げれば、
戦前の日本軍の様に、どのような優秀な人間が揃っていようと、組織で動くと、みんな「クズ(無能・無責任なエリート)」に成り下がってしまうのです。
なぜ、「不作為」「思考停止」を繰り返してしまうのか。
『人間は、自分の意志で考えて行動しているように見えて、実は、周囲の環境や役割や立場によって、無意識にその考えや行動が決定づけられている』
確かにすごい人もいますが、権威や権力にひれ伏す必要など、どこにもないのです。
問題は、「クズ(無能・無責任なエリート)」かどうかを見抜くことができる国民がどれだけ多いかだけですが、残念なが、半径5m以内の出来事で右往左往するしかない「愚民」が多勢に無勢を占めていますので、歴史は繰り返すだけでしょう。
ある意味、住みにくく、住みやすい国でも有るのです。 なぜなら「愚民」同士ですので。
最後に、
「愚民」と簡単に云いますが、この愚民を構成する単位の中に根付く、「資格よりも場」「序列意識」「ウチとソト」など、日本社会独自の構造を鮮やかに解き明かした「タテ」の理論が記載されていますので、社会学、人類学を学びたいと思う方にお勧めの一冊です。
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