【書籍紹介】 暴力の人類史  スティーブン・ピンカー (著)

2018年5月5日、
本日の書籍紹介は、「暴力の人類史」です。  スティーブン・ピンカー (著)

連休も、残すところ、あと1日と半分になってしまいましたが、どこにも行かなかった人ならまだ間に合います。 書籍などは1日あれば400ページくらいは読めてしまいます。慣れていればですが。上・下巻ありますので上だけでも読めます。

学校のお勉強では、何年になにが起きた。。などと、世界史、日本史で、学んでいると思いますが、それは、ひとまず置いて、なぜ人類は、殺し合いをしながら、我々だけ生き残ってきたのか? そんなに優秀なのか?

■暴力の人類史

人類の未来への希望の書。ニューヨークタイムズ・ベストセラー。

目次
第1章 異国
第2章 平和化のプロセス
第3章 文明化のプロセス
第4章 人道主義革命
第5章 長い平和
第6章 新しい平和
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■人間とは何者? 
自分は何者? と考える時に、この人類学的な部分に引かれますが、ただ人類学だけでは、決して問題を解き明かすことは不可能で、遺伝学、遺伝子学、脳科学、脳神経学、生物学、分子生物学など、自然科学的な背景を理解していないと、何がなんだか分からないと思います。

■なぜ、悲惨な歴史が繰り返されるのか? 
いつまでたっても、辞めれない、懲りない、人類の特性をいつも不思議に思いますが、誰も止めることが出来ない。 善とか悪とかに分類することではなく、人間が集団で生きるようになれば、なるほど、頭の配線のおかしいやつに、頭の配線の繋がりがあまり良くない、大多数の人間が楚々抜かされて、同じ方向にハマってしまう。 たとえ、文明が進歩していてもです。

例えば、鳥の大群が、ぶつからずに、同じ方向に進んでゆく様子によく似て、誰も止めることが出来ない状態になる。多くの動物がそうなように、人間も、何も考えず、「思考停止」状態になり、同じ方向に進んでしまうのは、進化しているはずの人類も同じ様な行動パターンに、陥ってしまうところは、動物と同じ、愚かさを露呈するところが、動物の事を言っている場合では有りません。

■こんな生き方をする生き物も居ます。 
コロニーを形成する生き物、アリやハチは、誰も、指揮、命令するものが居なくても、集団を維持する機能を働かせています。 その機能とは、個体差を利用した生き残りの方法です。

普段、アリやハチも、全員で働いているように見えますが、働かないものがたくさん居ます。それで良いんです。 なぜなら、全員で働くと、何かあった時、全員ダメになりますが、例えば、温度の違いで反応するように行動すれば、温度の上昇次第で、働く数が変わってきますので、全員、共倒れになることはないのです。

このように、集団行動を、「個体差」を利用して取りますが、決して、全員同じ行動は取らず、必ず、遊んでいる奴、働かないやつが、存在します。

人類には、こんな習性は有りませんが、社会の中を見渡すと、必ず、働かない奴が一定数いるのも確かです。「役に立たない」のと、「働かない」のは、違うと思いますが、役に立つ能力があるのに働かないのが一番、腹が立ちますね。

 

人類学、人類史を知ろうとするとき、避けて通れないのは、この戦いの歴史、もっと言えば、生き残るための「暴力」の歴史でもあります。

戦い、暴力が、大好きなのが特徴なのが「人類」です。 事実、未だに止めることができません。

最近、たまに、事件が起きて、目にするようになった、脳の配線のおかしい「サイコパス」どころの話ではありません。その集団のルールに従えば、どんな殺戮でも行います。 一番人間に近いと言われているチンパンジーもそうですが、サルを襲って殺すことなど、普通の事です。蛇足ですが、「サイコパス」って、昔から、一定数、存在していたと、実感として感じます。

もう、「脱線」しそうですので、本題に入りますが、本書の著者「スティーブン・ピンカー」によると、

「実は暴力は、狩猟採集社会のころと比べると歴史的に減少している」。

「人間の本性は、私たちを暴力へと促す動機を持ち合わせているが、適切な環境さえ整っていれば、私たちを平和へと促す動機も持ち合わせている」

 

本書籍のお題目は2つあり、

■1つ目は、暴力が歴史的に減少しているという事実を明らかにすること。本当かどうかは、何を基準にするかで、意見が分かれると思いますが。

■2つ目は、どういった暴力が、いつ、どのように発生し、なぜそれが減少したのかを先史時代から現代まで人類の歴史を通して、神経生物学や脳科学など最新知見を総動員し、暴力をめぐる「人間の本性」を分析しています。

 

人類の歴史で云えば、狩猟採集民の時代(数十万年前から)の方が、圧倒的に長いのです。

■有史以来の「狩猟採集」民の時代 ——> いつでもどこでも殺し合いが起きていた。

■地域差は有るが「農耕」が発達して、定住生活が始まり、食べものが備蓄できるようになる。—>集団を形成するようになる。

■国家社会を形成する。——>国家間の戦いが始まる。

やっと、国家ができた後の、主な暴力(戦争)の原因は、宗教とイデオロギーだった。啓蒙主義、人権思想の発展、共産主義や全体主義の衰退、に伴って、これらを原因とする暴力は格段に減ったと言っています。

こんなに、昔から比べて、平和な時代が始まっているのは、殺し合いが減ったと言っても、つい最近です。 未だに、部分的な、地域的な紛争は続いていますが。。。。

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人類学に興味があるなら、この「暴力の人類史」だけでなく、まだまだ、たくさん、名著が有りますので、最後に記載した書籍をぜひ参考にしてみてください。

私も、1冊、数千円する書籍ですので、徐々に、買いそろえて、読みましたが、この連休で、下記に紹介する書籍を本棚からかき集めて、少しだけ読み直してみました。

どれを先に読んだらいいかと聞かれると、どれでもいいように思います。

書籍を読むときは、必ず、同じ「コンテキスト」の書籍を数冊以上読むのが、いいでしょう。

書籍により、書かれている角度が、それぞれ違うものもありますし、同じようなことを書いている場合もあり、多角的に、俯瞰的に人類の歴史を理解できれば良いのではないでしょうか。

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・銃・病原菌・鉄  1万3000年にわたる人類史の謎
第三のチンパンジー
【書籍紹介】 「第三のチンパンジー」 ジャレド・ダイアモンド (著)
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ジャレド・ダイアモンド著(進化生物学者でカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部教授)

特に、「銃・病原菌・鉄」は、必読書でしょう。同じ、人類でも、一部の人種が圧倒的優位を誇っているのはなぜか、人類の歴史の中で、「病原菌」が、どのような影響を与えたか、興味が尽きませんよ。

 

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疫病と世界史  ウィリアム・H・マクニール著
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疫病が世界史にどのような影響を及ぼしてきたか、という歴史の本です。

 

 

 

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