【書籍紹介】 「 禍いの科学」  正義が愚行に変わるとき ポール・A・オフィット(著)

2021年1月31日、
本日の書籍紹介は、(わざわ)いの科学  正義が愚行に変わるとき ポール・A・オフィット(著)

久しぶりに、面白い書籍を見つけてしまいました。

難しい脳科学や脳神経学や遺伝子工学の書籍ではありませんが、人類学的には、狩猟採集民から、農業が発展して、定住生活を行う様になり、集団で生活できる都市国家が形成されてきた中で、何かが起こると、当然、その集団、個人に及ぼす影響も大きくなります。 人間は「賢さ」と「愚かさ」を集団で暮らすがために、同時に連鎖・発揮してしまう生き物なんでしょう。

個人的には、
40年以上前ですが、東京でSEをしていた頃、ある大規模なシステムサービスを開発する一員として参加していましたが、完成して、いざサービスが開始されてると、時代のせいもありますが、ろくな使い方しかされていませんでした。

世の中の為になると思って、誇りに思っていた事でしたので、残念な思いをした覚えがあります。 世の中は、システムがいくら良くても、想定したようには利用されないのです。そんなことも、有るのだと云う事を思い知りました。

私の場合は、誰が考え付いたのかもしれませんが、そんなシステムを開発をしていた、ただの一員にしかすぎませんが、科学者たちが、研究、発明したことが、世の中を大きく変える要因になることは、たくさん有るのでしょう。

新たな科学の発想や発明が致命的な禍いをもたらすことがあるという事例です。

アヘン、トランス脂肪酸、窒素肥料、優生学、ロボトミー手術、殺虫剤など、過ちを犯してしまった科学が「なぜ」「どのような」経緯をたどってそこに至ったのかを、詳しくわかりやすい物語として紹介した、科学と人間のドキュメンタリーです。

イノベーションを起こす者、特に科学者が起こす禍は、誰もが良いことをしているつもりだった。だが、いったいどこで間違えたのか?

科学としては、輝かしい着想や発明であったにもかかわらず、科学者などの行いが、人々を不幸に陥れてしまう、致命的な禍いをもたらすことがあるという、今まで知らなかった事例が、複数挙げられています。

 

▮禍いの科学

日経ナショナル ジオグラフィック
発売日 : 2020-11-19

目次
第1章 神の薬 アヘン
第2章 マーガリンの大誤算
第3章 化学肥料から始まった悲劇
第4章 人権を蹂躙した優生学
第5章 心を壊すロボトミー手術
第6章 『沈黙の春』の功罪
第7章 ノーベル賞受賞者の蹉跌
第8章 過去に学ぶ教訓
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一例として、
第3章 化学肥料から始まった悲劇
窒素肥料を開発したドイツの科学者の物語が興味深いのでした。
第一次大戦下、ドイツの為に尽くした?が、ユダヤ人科学者の為、追われてしまった生涯。
ノーベル賞受賞者フリッツ・ハーバー について

 

第4章 人権を蹂躙した優生学
第二次世界大戦の前から、ドイツ、ヒットラーのユダヤ人に対する人種差別は、元々は、米国の優生学的思想を元にしています。 移民の国、米国でも、精神疾患を有した人たちを排除する行為をしていたのです。大体、移民の国なのに、排除しようとする事自体、おかしいのですが、精神分裂症(総合失調症)などで入院している患者にたいしてひどいことをしていたようです。

人種と言いますが、我々、人種は「ホモ・サピエンス」1種類だけです。

黒人も白人も黄色人種も無いのです。 オリジナルは黒人で、白人は突然変異です。

この事自体、ちゃんと認識できていない「バカ」が結構居るのです。

第5章 心を壊すロボトミー手術
1970年代だと思うのですが、NHKの放送でもこの事件をやっていて、この手術を流行らせた先生(怪物)の事をやっていました。 最後は、アイスピックを頭の中に突っ込んで、数分で施術をしていたそうですが、「アイスピックを頭の中(前頭葉)に突っ込んで、グリグリ?」何のこっちゃです。

この当時、本当に、脳の事を知らなかったのでしょうか?、今の時代でも「凡人」なら分からないでしょうが、とんでもない事です。脳神経学を学んでいなくても分かるでしょう。

暴れたりする人間が、廃人の様におとなしくなる程度のことで、効果があるとみなされていたのでしょうか? 国で規制をかけるまで、大勢の方が犠牲になっています。

このように、本当に、頭の配線のおかしいやつが、あやしいことやりだしても、最初は、誰も止めることが出来ないため、愚かにも、犠牲者を大勢出してしまうのです。

 

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