【書籍紹介】 老人支配国家 日本の危機  歴史人口学者 エマニュエル・トッド(著)

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2023-04-26、
本日の書籍紹介は、老人支配国家 日本の危機 フランスの歴史人口学者 エマニュエル・トッド(著)です。

本書は、日本社会における高齢化に焦点を当て、警鐘を鳴らす内容となっていますが、人口問題で云えば、本当の脅威は、「コロナ」でも「経済」でも「中国」でもない。「日本型家族」だ! と言っています。

本当の脅威は、「コロナ」でも「経済」でも「中国」でもない。「日本型家族(直系家族)」だ!

若者の生活を犠牲にして老人のコロナ死亡率を抑えた日本だが、社会の存続に重要なのは高齢者の死亡率より出生率だ。

「家族」が日本社会の基礎だが、「家族」の過剰な重視(子育て、老人介護など家族にすべてを負担させる)は「非婚化」、「少子化」を招き、かえって「家族」を殺す。

高齢者の健康を守るために、若者と現役世代の生活に犠牲を強いたわけで、その傾向は、例えば、老人支配の度合いの強い英米よりも、日本のような「老人支配」の度合いの強い国ほど顕著です。

日本の「少子化」は、「直系家族の病」と言える。

目次
日本の読者へ――同盟は不可欠でも「米国の危うさ」に注意せよ
Ⅰ 老人支配と日本の危機
1 コロナで犠牲になったのは誰か――「老人」の健康を守るために「現役世代」の活動を犠牲にした
「シルバー民主主義」
2 日本は核を持つべきだ――「米国の傘」は実はフィクションにすぎない
3 「日本人になりたい外国人」は受け入れよ――日本に必要なのは「多文化主義」ではなく「同化主義」だ

Ⅱ アングロサクソンのダイナミクス
4 トランプ以後の世界史を語ろう――黒人を“疎外”したのはトランプではなく民主党だ
5 それでも米国が世界史をリードする――民主主義の“失地回復”は常に「右」で起きる
6 それでも私はトランプ再選を望んでいた――「高学歴の左派」は「低学歴の労働者」の味方ではない
7 それでもトランプは歴史的大統領だった――トランプの“政策転換”が今後30年の米国を方向づける

Ⅲ 「ドイツ帝国」と化したEU
8 ユーロが欧州のデモクラシーを破壊する――ユーロ創設は仏政治家が犯した史上最悪の失敗だ
9 トッドが読む、ピケティ『21世紀の資本』――貧しい人々には「資本の相続人」よりも
「学歴があるだけのバカ」の方が有害かもしれない

Ⅳ 「家族」という日本の病
10 「直系家族病」としての少子化(磯田道史氏との対談)――日本人は規律正しい民族だが“自然人”としての奔放な面もある
11 トッドが語る、日本の天皇・女性・歴史(本郷和人氏との対談)――女性天皇の登場は、中国の父系文化への反発でもあった
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1.日本の家族の構成、機能、そして日本の社会において家族が果たす役割について論じたものです。

彼が指摘する旧来の日本型家族は、父親が将来的な遺産を分配するための決定権を持っているが、その決定は長男にしか許されていないことを特徴としています。しかし、現代は父系家族制度よりも、「母系制度」に基づく家族構造であること、また、親密な親子関係でありながらも、家族の中で個人の自立が重視されていることも挙げられます。

彼の研究によれば、日本においては家族の中での地位や年齢による関係が重要であり、家族が共同体として働くことが大切であるとされています。また、日本の家族には平等主義が根付いており、家族の中での役割や権限が明確に分かれることは少ないと分析しています。 ただし、近年は社会の変化によって日本の家族構成も多様化しており、トッドの著作の持つ洞察力や有用性は、今後ますます高まっていくことが予想されます。

 

2.「日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学」

社会学的には、「日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学」小熊 英二 (著)による分類なのですが、60年代後半から70年代のはじめに完成したその構造を「社会のしくみ」と呼んでいます。 

「大企業型」が約26%、
毎年、賃金が年功序列で上がっていく人たち。大学を出て大企業の正社員や官僚になった人などが代表です。

「地元型」が約36%
地元にとどまっている人。地元の学校を卒業して、農業や自営業、地方公務員、建設業などで働いている人が多い。

「残余型」が約38%
平成の時代に増加してきたのが、所得も低く人間関係も希薄という「残余型」。都市部の非正規労働者などがその象徴です。

 

1)日本社会の変動について

貧乏な時代はみんな寄り添って暮らしてきたが、経済が成長して、ある適度、貧乏でも食ってゆけるようになると、核家族化してき、みんな自由になると同時に格差が広がり、食っていけないほど貧乏ではないが、何一つ経済的に余裕のない相対的な貧困化が進んでしまう要因でもあります。社会が階層化してきて、それが固定化してきています。

この流れは、「誰も止められない」のです。 「誰も」です。
なぜなら、みんなそうしたいからです。

■他人との関係性が、極めて、希薄になると、色々なことも経験できなくなる。
幼少期から、親、兄弟、親戚、近所の大人、学校外のお友達、学校が終わっても、人間性を築く場所が有ったが、現代は、塾に行くか、家の中で、一人でじっとバカゲームをしているだけで、学校以外の近所のガキどもと遊ぶこともない。いつも、接しているのは、せいぜい母親くらい、親父は遅くならないと家に帰ってこない。

▮社会をどう捉えているのかは、人それぞれ、どの階層に居るのかによっても、違うでしょうが、上の階層の人間は、社会的にも力もあり、変えようとは決してしない。

日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学で記載されているように「変動」が起きているのは、確実に下の階層の民衆です。 社会の仕組みで云えば残余型」の人たちです。

下の階層の人間たちは、どんどん貧窮してゆく。 上の階層の人間は、社会が乱れる、混乱する、ぎりぎりの処まで、放置する。 これが日本の現状で、このまま現状が維持さて、行くところまで、行きつくのではないでしょうか。

極端な言い方をすれば、もう、夜中、女性が一人で、夜道を歩いて帰宅することが、困難な時代になるのは、そう遠くないように思います。

 

最後に、

戦後、経済が復興してい行く中で、地方の農村部から、都市部の仕事のある場所に、人口が流出し、人々の暮らしも、徐々にですが大きく変わりました。

まず、都会に出れば、田舎で「家父長制度」の中で、我慢して生活しなくてもよくなり、皆、色々な「タコつぼ」や「しがらみ」から解放され、「核家族」になり、やれやれ、と思っていた頃に、経済の成長が止まり、給料が上がらなくなると、男も女も働かざるを得ない状況になった時、はて? 子供の面倒はだれが見る? 田舎で家族と一緒に暮らしていれば、ジジ・ババが居て面倒を見てもらえたが、それもできない。

個人レベルで云えば、「自業自得」の所業なんだが、いかんせん、結婚して子供を産んでもらわないと、人口減少に歯止めがかかりませんので、国として、面倒見ない訳にゆかない状況になっています。

ましてや、結婚できる奴は、まだ良い方で、この経済状況では、「結婚できない」、「結婚したくない」の結婚適齢期の国民が増え続けています。

結婚していない奴らに少子化の問題を振る前に、まずは、結婚できた夫婦が子供を育てやすい環境を作る方に、政府は金(税金)を使うのが方策でしょう。

経済状況も悪い、更に「格差社会」の中で「結婚できない」奴は一生できないでしょうから、これは、経済を発展させるか、格差を是正しない限り、問題を解決できないでしょう。

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