2023-04-23、
本日の書籍紹介は、軍事問題 第三次世界大戦はもう始まっている エマニュエル・トッド (著)です。
先日の記事でも、初めて紹介した「エマニュエル・トッド」でしたが、この書籍は、自国フランスでは出しにくく、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、去年、大好きな日本の「文春新書」での緊急出版になったそうです。
内容も、何と!「戦争を仕掛けたのは、プーチンでなく、米国とNATOだ」、「戦争の責任は米国とNATOにある」と言い張っていますので、自国(フランス)でこんなのを出したら、さしずめ日本などでは「非国民」扱いされるでしょうから。。。
<目次>
1 第三次世界大戦はもう始まっている(“冷酷な歴史家”として;
「戦争の責任は米国とNATOにある」 ほか)
2 「ウクライナ問題」をつくったのはロシアでなくEUだ(「共同体」でなく「国益追求の道具」と化したEU;ウクライナに関心をもつ三国 ほか)
3 「ロシア恐怖症」は米国の衰退の現れだ(米露を“歴史的ペア”として分析する;
なぜか悪化した米国の対露感情 ほか)
4 「ウクライナ戦争」の人類学(第二次世界大戦より第一次世界大戦に似ている;
軍事面での予想外の事態 ほか)
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戦争を仕掛けたのは、プーチンでなく、米国とNATOだ。
■西側メディアでは、日々こう語られている
「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局「ヒトラー」の暴走を許した1938年のミュンヘン会議の二の舞になる」。しかし、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だ。
ウクライナは正式にはNATOに加盟していないが、ロシアの侵攻が始まる前の段階で、ウクライナは「NATOの〝事実上〟の加盟国」になっていた。米英が、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを「武装化」していたからだ。現在、ロシア軍の攻勢を止めるほどの力を見せているのは、米英によって効果的に増強されていたからだ。ロシアが看過できなかったのは、この「武装化」が、クリミアとドンバス地方の奪還を目指すものだったからだ。「我々はスターリンの誤りを繰り返してはいけない。手遅れになる前に行動しなければならない」とプーチンは発言していた。つまり、軍事上、今回のロシアの侵攻の目的は、何よりも日増しに強くなるウクライナ軍を手遅れになる前に破壊することにあった。
ウクライナ問題は、元来は、国境の修正という「ローカルな問題」だったが、米国はウクライナを「武装化」して「NATOの事実上の加盟国」としていたわけで、この米国の政策によって、ウクライナ問題は「グローバル化=世界戦争化」した。
いま人々は「世界は第三次世界大戦に向かっている」と話しているが、むしろ「すでに第三次世界大戦は始まった」。ウクライナ軍は米英によってつくられ、米国の軍事衛星に支えられた軍隊で、その意味で、ロシアと米国はすでに軍事的に衝突しているからだ。ただ、米国は、自国民の死者を出したくないだけだ。
ウクライナ人は、「米国や英国が自分たちを守ってくれる」と思っていたのに、そこまでではなかったことに驚いているはずだ。ロシアの侵攻が始まると、米英の軍事顧問団は、大量の武器だけ置いてポーランドに逃げてしまった。米国はウクライナ人を〝人間の盾〟にしてロシアと戦っているのだ。
エマニュエル・トッドは、家族構造を主に「権威主義的家族(直系家族)」、「平等主義核家族」、,「絶 対核家族」、「外婚制共同体家族」、「内婚性共同体家族」、「非対称共同体家族」、「アノミー 的家族」の 7 つに分類しています。
参照:https://ijuusya.com/emmanuel.html
<エマニュエル・トッドの考える家族人類学>
1)「権威主義的家族(直系家族)」
ある家族の子どものうち一人が跡取りとなり、全ての遺産を相続する家族制度をベースとしている、日本やドイツ語圏、スウェーデン、フランス南部などに見られるこうした家族形態は、親子関係が権威主義的であり、兄弟関係が不平等主義的となる。従って「権威主義的家族」の下では、権威と不平等という価値観を内面化する人間が育つ。そして、彼/彼女らは人間の不平等性や差異を認識し、延いては「国民」の不平等性をも無意識の中に確信するようになる。2)「平等主義核家族」
子どもたちは成人或いは結婚後に独立した世帯を持つようになり,遺産相続は兄弟間で平等に行われる。
パリを中心とした北フランスやイタリア北西部、ポーランドやギリシャなどで見られるこの形態では、親子関係は自由主義的で、兄弟関係は平等主義的となる。ここで人々が内面化する価値観は自由と平等の 2 つで、フランス革命とそれを推進したパリ盆地の農民の家族制度との関連をトッドは指摘している。そこでは、人間及び「国民」の平等性、普遍性という観念が生まれる。
3)「絶対核家族」
子どもたちは独立してゆくが,主に遺言によって為される遺産相続は平等というよりむしろ親の意思によって決定される。ここでの親子関係は自由主義的であり、兄弟関係は平等への無関心によって特徴付けられる。
トッドによれば、こうした形態はヨーロッパ特有のもので、イングランド,オランダ,デンマークの大部分,フランスではブルターニュの大部分に分布している。こうした家族制度の中で育つ人間は,自由という価値観を内面化する一方、平等には無関心である。従って、人々は銘々の「違い」を前提とするため,差異主義的な発想(ex「国民」と「国民」の違い)を抱くようになる。
4)「外婚制共同体家族」
子どもは成人/結婚後も親と同居し続けるため,家族を持つ兄弟同士が一人の父親の下に暮らす巨大な家族形態が生まれる。遺産は平等に分配され,権威主義的な親子関係と平等主義的な兄弟関係がそこにはみられる。
ヨーロッパではイタリアとフランスの中部に少数派として存在するが、多くはロシア、中国、ヴェトナム、旧ユーゴ地域,フィンランドなどに見られる形態である。
ここで人々が内面化する価値観は、親子関係に基づく権威と、兄弟関係に基づく自由である。トッドは、こうした価値観が当該地域での共産主義を支えていると指摘する。
残りの5)から7)カテゴリーは、ヨーロッパには存在しない家族構造
5)「内婚性共同体家族」
主にアラブ・イスラム圏に分布している。いとこ婚を許容するイスラム教教義によって展開されるこの家族形態では,「外婚制共同体家族」と同様に平等と共同体主義を根底に持つことから、普遍主義的人間観を持つ人間が育つ。そして、「異なる」集団を比較的同化しやすい能力を持つことから、自らの地域を拡大,所謂「帝国」化する傾向が生まれる。
6)「非対称共同体家族」
インド南部を領域とする、カースト制を支える家族形態である。母系的内婚が優先され、父系での内婚が禁じられているこの家族制度では絶対的な差異という価値観が共有され、それがカースト制の土台となっている。また女性の地位が比較的高く、識字率も非常に高い。
7)「アノミー 的家族」
ビルマ、タイ、カンボジア、ラオス、マレーシア、フィリピンなどの東南アジア諸地域、及びインディオの家族形態であり,親子関係と兄弟関係が共に不安定なため、人々は共同体主義と個人主義の迫間で生きることになる。このことは政情不安にも繋がり、トッドはポル・ポト率いるクメール=ルージュによるジェノサイドがこれに関連する現象と指摘している。
このように定義付けられた家族制度がイデオロギー(政治的、社会的な思想傾向)を決定付ける、という結論が導き出されるという説です。
権威と不平等を価値観に持つ権威主義的家族の社会は,「社会」レベルでは社会民主主義を支持する一方で、「民族」レベルでは自民族中心主義的な思想傾向を抱える。また、反動的な宗教勢力としてキリスト教民主主義が台頭する。
自由と平等を重んじる平等主義核家族の社会では、「社会」的には無政府社会主義を、「民族」的には自由軍国主義を、反動宗教勢力としてはキリスト教共和主義が生まれる。共同体家族の社会では、権威と平等を基本的価値観としているため、一方で共産主義を、もう一方ではファシズムの出現を可能にする。
この物の考え方は、私にとっては初めての発想で、一人の狂った為政者とバカな国民のせいで、戦争が始まってしまうと、浅はかにも考えていましたが、どうしようもない家族制度のおかげで、為政者がいくら悪党で、サイコパスでも、国民は、育ってきた環境(イデオロギー)にはまってしまう、独特な逃れられない「土壌」がベースにあるのだ。という事が認識できたような気がします。
今回の戦争は、第二世界大戦より、第一次世界大戦に似ていると指摘しています。
最後に、
他国を侵略する上で、どんな理由が有ろうとも、色々な思惑や策略が渦巻いているだろうが、例え兵士であろうと国民で、それを犠牲にして、国益を死守しようとする行為は、第二次世界大戦で、もう十分ではなっただろうか。
「戦争」ですので、国内の社会の中の「喧嘩」とは訳が違い、ルールもモラルも無いので、仲介して辞めさせるか、どちらかが負けるまで続けるしか方法が無いのです。人類は、いつまで経っても、「モンスター」のような為政者に引きずられ争い、戦う事を止められない生き物です。
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