2023-08-29、
本日の書籍紹介は、境界知能の子どもたち 「IQ70以上85未満」の生きづらさ (SB新書)
宮口幸治(著)です。
日本人の7人に1人(14%)!
「普通」でも「知的障害」でもない、はざまの子どもたちと大人
今の日本の社会の中で起きている「社会問題」を上げれば、DV・虐待、いじめ、依存症、貧困、孤立・孤独死、引きこもり、教育問題(不登校)など、世の中の階層をまたいで発生している。特権階級も例外ではない問題は、やはり、脳の配線がおかしいと発生してしまう問題でしょう。
私には、幽霊は見えませんが、発達障害、愛着障害、人格障害などの特徴を持った人は、大体、分かりますが、その中でも、ちょっと分かりにくいのが、ボーダー(境界知能)と呼ばれている人がいるのです。
「ダイバーシティ(多様性)」と簡単に言いますが、この「ニューロダイバーシティ(神経構造の多様性)」の問題は、社会の中でどう扱うのかが、問題になってくるのですが、何も進みません。
■境界知能の子どもたち
<目次>
第1章 気づかれない「境界知能」と「軽度知的障害」
第2章 知能検査について知る
第3章 教科学習の前になぜ認知機能が大事なのか?
第4章 子どもの可能性はどのように伸ばすのか?
(一番の困りごとは「勉強ができないこと」;その子の学習のつまずき箇所を知る ほか)
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【内容】
境界知能の子どもたちは、一見すると普通の子に見えます。
もしも、みなさんの知り合いに境界知能のお子さんがおられたとしても、まず気づかないと思います。その子に道で出会ったら、あいさつを交わして会話も成り立って、困っている子には見えないはずです。あるいは、わが子が境界知能の場合でも、客観的には普通の子に見えるのではないでしょうか。
「普通」の子に見えるのに、「普通」ができない――これは、境界知能の子だけではなく、軽度知的障害の子にも当てはまる場合があります。知的障害でも「軽度」というところがポイントで、一見すると普通の子に見えて、見過ごされてしまうケースがあるのです。本書では、「境界知能の子どもたち」と銘打っていますが、その内容は軽度知的障害の子にも当てはまる部分は大いにあります。・授業についていけない
・友達とうまくつき合えない
・感情コントロールが下手
……そんな困りごとがあれば、子ども本人のやる気や性格のせいだと片づけるのは早計かもしれません。
この本を手に取った方は、境界知能の子どもの親御さんや、クラスに「気になる子ども」のいる学校の先生、あるいは福祉や心理など特別支援教育の関係者の方が多いかと思います。
親や教師、周囲にいる大人は、その子のしんどさ、そしてしんどさの背景にある「認知機能」の問題に気づいてあげてほしいのです。
(「はじめに」より)
1.認知機能とは
「脳」が情報を受け入れ、処理し、理解するための一般的な心の働きを指します
外界を正しく認識し、正しく実行するための機能のことで、記憶力、知覚、注意力、言語理解、判断、推論などの幾つかの要素が含まれた知的機能を指します。これは日常的な思考や情報処理に関連する概念であり、個人の認知機能の質や効率が、知識の取得や問題解決に影響を与えることがあります。
歳を取って「認知症」になる場合もありますが、若くても「認知機能」に偏りのある人もいるのです。人間は、皆、同じ物を観ていると思ったら、大きな間違いなのです。 観る人によって、大きく違っている場合が、多々あるのです。
認知の差が生じるのです。どうしてもです。 それは「脳」の配線(シナプス)と脳の機能部品の性能が、一人ひとり違うからです。
2.「境界知能(ボーダー)」とは、
IQが70~84程度で、いわゆる「知的障害」(IQ69以下)とまでは言えないが、現代社会では、普通学級で教育を受けて、そのまま社会に出されて、生きていく上では相当程度の困難に直面していると考えられている人たち。
1)日本人の境界知能の割合は、
人口の約14%、約1700万人と推定されています。これは、知的障害の割合(約2.5%)の約6倍に相当します。
- 昔は知的障害と定義されていたIQ70~84の人
- 35名のクラスに約5人いる
- 日本人の7人に1人
- 平均的な子の7~8割くらいの発達年齢
2)境界知能の人の具体的な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
- 学習や理解に時間がかかる
- 抽象的な概念を理解するのが難しい
- 注意力や集中力が続かない
- 言葉をうまく理解できない
- 感情をコントロールするのが難しい
- 対人関係に困難を感じる
3.改善させようとする取り組みが進まない理由
日本の義務教育において、境界知能の子供たちの学習を改善させようとする取り組みが進まない理由
・境界知能への理解が不足している
境界知能は、知的障害と健常者の中間に位置する知的機能の状態であり、その特徴や困難が十分に理解されていないことが、取り組みが進まない一因と考えられます。・特別支援教育への偏見や誤解がある
特別支援教育は、障害のある子供たちに対する支援教育であり、境界知能の子供たちも対象となります。しかし、特別支援教育は、障害のある子供たちを「特別な存在」として扱うという偏見や誤解があり、そのため、境界知能の子供たちに対する特別支援教育の必要性が十分に認識されていないと考えられます。
・教育現場の負担が大きい
日本の義務教育は、すべての子供たちが同じ学習内容を学ぶことを前提としており、そのため、境界知能の子供たちへの特別な支援を行うためには、教育現場の負担が大きくなるという課題があります。■これらの課題を克服するためには、境界知能への理解を深め、特別支援教育への偏見や誤解を解消し、教育現場の負担を軽減するなどの取り組みが必要と考えられます。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・境界知能に関する研修を教員に行う
境界知能の特徴や困難を理解することで、教員は境界知能の子供たちに対する適切な指導を行うことができるようになります。・特別支援教育の理解を深めるための啓発活動を行う
特別支援教育は、障害のある子供たちだけでなく、境界知能の子供たちも対象であることを理解してもらうための啓発活動を行うことで、特別支援教育への偏見や誤解を解消することができます。・教育現場の負担を軽減するための支援を行う
特別支援教育の実施に必要な教材や設備の整備、教員の負担を軽減するための人員配置や研修の充実などの支援を行うことで、教育現場の負担を軽減することができます。これらの取り組みにより、境界知能の子供たちの学習を改善させ、社会に貢献できる人材を育成することが可能になると期待されます。
「境界知能」という、特にテレビではある種タブー視されている領域に踏み込んだ作品でした。
・参考サイト
真矢ミキ主演ドラマ「さくらの親子丼」で注目 「ケーキの切れない非行少年」とは?
最後に、
■本来、この問題は、小学校の学校教育レベルで、考えるレベルで、教育の「指導要領」にがんじがらめにされた、教育現場では、こんな子たちまで面倒を見切れないと言っています。
義務教育であっても、小学校、中学校でも、「境界知能」の子たちは「留年」させるべきでしょう。
みんな同じではないのです。 義務教育制度も変える必要があるでしょう。先生も、ちゃんと支援者と支援者を支える人が居て、しっかりしていれば、改善する余地は十分に残っていると言われています。
■犯罪や引きこもり、いじめ、虐待、DV、貧困などの色々な社会問題の発生にも、大きく絡んでいるのは確かで、生きにくい生き方をしている人たちを支援して行く必要があるのではないでしょうか。
「ダイバーシティ(多様性)」とお題目ばかりでは、何も問題は解決しないのです。
子どもの可能性はどのように伸ばすのか? このような子どもたちの可能性を伸ばすための具体策を提案しています。
■著者:宮口幸治 プロフィール
立命館大学総合心理学部・大学院人間科学研究科教授。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務し、2016年より現職。医学博士、臨床心理士。
<宮口幸治 書籍紹介>
▮ケーキの切れない非行少年たち
2022年3月現在、累計発行部数120万部のベストセラーとなっている。
▮どうしても頑張れない人たち~ケーキの切れない非行少年たち2 (新潮新書)
—関連記事—
・【書籍紹介】 ケーキの切れない非行少年たち 宮口 幸治 (著)
・【書籍紹介】 どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2 宮口 幸治 (著)
・書籍「ケーキの切れない非行少年たち」の内容とIQと認知能力、学校の教育制度の欠陥について
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