今回は、ウール物などの実際の洗い方についてです。
自分で、やれば確実にクリーニング代を節約できますし、きれいになります。基本的に、なにも難しくは有りませんが、非常に「手間」がかかります。それだけです。
<追記> 2020年3月
「マスク」の入手困難が続いていますが、捨てずに、洗って使えます。
洗面器に40度くらいのお湯を少し張り、洗剤を少し入れてマスクを浸します。
その後、少し、押し洗いをして、濯ぎ、乾いたタオルを挟んで水分を取り、干しておけば、次の日の朝には、使えるでしょう。
1.ウール物のスーツ上下の「洗濯方法」
1)洗剤の種類
決して、下着を洗うような洗剤はダメです。 具体的には、アルカリ性、蛍光剤、漂白剤入りの洗剤は、絶対ダメです。
<ウール物を洗う時、アルカリ性の洗剤がだめな理由>
ウール物を洗う場合、人間の「髪の毛」と同じで、毛は、ばい菌から守る為、PHは「弱酸性」です。 人間の「肌」も同じです。
洗濯石鹸(アルカリ性の強い)で、自分の髪の毛を洗わないですよね。。。。なぜなら、乾くと、「洗浄力」が強すぎて、髪の毛がボサボサになりますから。ですので、シャンプーなどは「弱酸性」、「中性」というのが多いはずです。
「中性洗剤」を使う理由は、アルカリが強いと洗浄力は有るのですが、素材を痛めやすいので、「アルカリ性」ではなく、「中性」洗剤を使います。
普通のパンツやシャツなどは、綿や麻、ナイロン、ポリエステルなどの素材ですので衣類を洗濯するときには、弱アルカリ性洗剤が一番良く汚れが落ちますが、
ウールは「毛」ですので、アルカリ性洗剤は使いません。
「風合い」がなくなっても良いのでしたら、アルカリ性の洗剤の方がきれいになると思います。 但し、ウールのスーツもボサボサになります。
本当は、弱アルカリ性の方が洗浄力が高いのですが、食器洗いの洗剤も中性です。 これは、手荒れを防ぐために中性にしてあります。 人間の「肌」、「毛髪」も、ばい菌から肌を守る為、弱酸性です。
(1)人間の髪の毛と同じですので、中性(ペーハーですよ)洗剤です。
(2)「蛍光剤」の入っていない洗剤(白いものを洗う時だけです)、「漂白剤」入りもダメです。
(3)できれば、酵素入りの(タンパク質汚れにききます)。
「エマール」とかありますが、私の場合は、ライオンの「ナノックス」ですね。 汚れ落ちはこちらの方が断然いいです。
(4)水道の水を使いますが、できれば「カルキ抜き」をした方がよいと思います。
本当に、色合いまで気を使いたい方には、
水道水には、「塩素(カルキ)」が入っていますので、洋服の色合いを損ねるのを少しでも避けるためです。
水洗い時のカルキ抜きは、クリーニング屋でも必ず実施しているかどうかは、その店によります。全然していない場合がほとんどでしょう。。
「ハイポ」と云う塩素を中和する錠剤を使用すると抜けます。
金魚や熱帯魚などを飼育する際に、水に入れて使用する商品でOKです。 ここまで来ると本格的です!
2)洗う前の処理(お掃除です)
スラックスの場合など、洗う前の作業ですが、大きなクリーニング店では、ほぼ99.9999%実施していません。
長年、 クリーニング店に出しているスラックスで、自分で洗う前に、まず、腰から足元に手を突っ込み、生地を裏返しにします。そして、縫い目の折り返してい る所、冬物の膝あたりから裏地が入っている部分をよーく、ひっくうり返してみて下さい。。。溜まっているはずです。
綿埃が。。。。 これを全部、歯ブラシなどで、良いですので、きれいに掃除します。
溜まっているはずです。 洗うのは、これが終わってからです。
もし、長年はいていて、溜まっていなければ、たいへん優秀なクリーニング屋さんに出していたことになりますので、大いに「感心」してください。
3)洗い方(浸け置き洗い+ブラッシング)
(1)お湯はり
タライにお湯を張ります。。。。いまどき「タライ」など有るわけないだろー!
そうですね。。。2着以上の場合、お風呂場の湯船でOK。
温度は、40度強くらい、お湯の量は、衣類の量にもよりますが、衣類を浸して水に隠れる位の湯量でOK。
水道水の塩素を中和する為に「ハイポ(チオ硫酸ナトリウム)」と云うカルキを除去する錠剤を入れる。(ここまでやると本格的ですが、衣類の色合いが落ちるのを、どうしても気になる方は、ここまでやりましょう)。
ハイポの量は、水40リットルに対し1gくらいなので、1~2粒程度で良いのではと。
(2)付け置き
洗剤を入れて、お湯を良くかき混ぜて、衣類を浸して、20~30分くらい付けておきます。
そのあと、決して、ごしごし、もみ洗いしてはいけません。 酵素は36度くらいで30分くらいでないときかない。
ですので、最初40度強のお湯にすると、時間が経過すると、冷めて36度以下になる。
・どうして、30分も付け置きしておくのか?
洗剤には、酵素が入っている物が有りますが、酵素の効果が出るのは。人間の体温付近の温度で、酵素が働くまで30分くらいかかるからです。 洗剤メーカーによっては、30分もかからないで効果が出るのも有ると思いますが。。
<補足説明>
酵素は、特定の汚れだけを落としてくれて、生地にダメージを与える様な影響がでないという性質を持っています。
下記のような酵素が有り、酵素の良い所は、特定の物質にしか効果が無いと云う事です。 コストがかかりますが。。
・プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)
・リパーゼ(脂肪分解酵素)
・アミラーゼ(デンプン分解酵素)
・セルラーゼ(繊維分解酵素)
クリーニング業をしていた時に、コストがかかりますが、Yシャツを洗う時に、別途、酵素も入れて洗ってしていました。
(3)汚れ落としの作業
30分くらい経ったら、ブラシを用意して、襟、袖口、ポケットなど、肌が触れる部分を中心に、軽くブラッシングする。
ブラシ? なければ、歯ブラシ。。。。時間がかかるので、あんまりおすすめではないが。
小さい「タワシ」でもOKです。これお勧めです。
ウール生地の場合は、「もみ洗い」など、あまり、しないように、つけ置き後、洗剤を付けて、汚れが付く部分だけブラッシングする。
スラックスの場合などは、裾、左右ポケット、前ファスナー部分、太ももの内側部分などを重点的にブラッシングする。
<補足説明>
・どうして、ごしごし洗わなくても良いのか?
ちびっこ達の泥汚れズボンやTシャツじゃありませんので、「界面活性剤」の力を借りて落とせばよいのです。
界面活性剤は、洗濯物の繊維に付いた汚れの表面に吸着して、汚れごと繊維から引き剥がして、汚れを落とします。ですので、そんなに「ごしごし」しなくても、普段、大人が使用しているくらいの汚れは、つけ置き程度で、十分とは言えませんが大体落ちます。 汚れの付いている所だけ、ブラシでさっとこすります。
【補足】
横ドラム式の洗濯機が有る場合、下記の様な厚手の「ネット」が有るのですが、これに入れて、1分くらい回しても大丈夫でしょう。
・ダイヤ (Daiya) 洗濯ネット おしゃれ着 大
(4)すすぎのやり方
実際には、
1回目は、泡を取るために、かるく脱水——>すすぎ——>2回目の脱水——>リンス剤につける——->脱水で完了(泡を取るために1回脱水しているので、すすぎは1回で十分かと思います)。
まず、洗濯水から「洗濯物」取り出して、洗濯機で、最初、脱水します
手で絞らずに、洗濯機のドラム周りに這わせるように置いて、1分くらいの回転でOKです。
泡を脱水してしまえば、すすぎは、1回で大丈夫だと思います。
タップリめの水、又は、ぬるま湯に浸けて、絶対、揉んだりしてはいけません。
数回、襟を持って、押し沈めるようにして(拷問する時の様に。。。表現がちょっと病んでいます)すすぎます。
私の場合、ナノックスという洗剤ですので、泡切れがいいので、すすぎは1回です。
最後の脱水は、結構、重要ですが、すすぎは、すすぎの水に入れた時に、泡が出ない程度でOKです。
(5)リンス
すすぎ後、脱水するのですが、その前に、リンス剤を入れた水にちょっと、服を浸します。
それを手で絞らずに、脱水します。
髪の毛と同じですので、リンス剤でちゃんとリンスします。 仕上がりが違います。 生地がサラサラになります。
(6)洗濯機で脱水する時のこつ。
脱水時も、ちょっとコツが有ります。 何分も回転させない事です。 シワの原因になりますので。
次に1回から2回程度、すすぎをして、もう一度脱水(2分)です。
脱水する時もなるべく、しわのよらないように、洗濯槽内のドラムに這わせるように配置すること。
タイマーを2、3分にセットしても、回転が止まる以前に、ドラムの回転が最高回転になって5秒程度で、スイッチを切って止めて、すぐハンガーにかけて、しわを伸ばす。 特に縫い目の部分です。
これで、「ドライクリーニング」で、100回洗ったより、きれいになります。。。ちょっとオーバーな表現ですが。
4)乾燥
大きめのハンガーに掛けて、なるべく日陰で乾燥する。
半乾きの状態で、生地を縫い目に沿って、少し、引っ張っておく。 生地の縮みより、縫い糸を伸ばすためです。
5)仕上げ
(1)乾燥後の仕上げ(アイロンかけ)
これが、頭の痛い所です。 私のように「アイロン」を駆使できる人でしたら、可能なのですが。。。
時間をかかれば、できないことはありません。
袖の付け根と肩のパッドの入っている部分以外は、素人の方でもちゃんとできます。 裏地も丁寧にかければ、うまくゆきます。
もちろん、「糸」はウールではありませんので、縫い目に沿って、少しチジミますので、蒸気を当てて少し伸ばすような、アイロンのかけ方が、少し必要です(実は、ここが職人技なのですが。。。)。
自分で、アイロン仕上げをやってみたい方へ、ウール物の生地の特性について。
これは、テーラーの社長さんに教えていただいたので確かだと思います。
生地(ウールですが)に当て布(日本てぬぐいがベスト)をして、上から「霧吹き」で水を吹きかけて、アイロンを「ガン!」とかけても大丈夫だそうです。
良い生地ほど、「ガン!」とつぶしても、後で霧をかけると、毛がフワーッと立つそうです。
私の場合、上着を一着仕上げるのに、普通のアイロンですと。30分以上かかります。 根気のある方、向けですが。。。
問題は、肩パットの部分で、丸いアイロン台が無いと、仕上げるのが、難しいですね。
<アイロンを購入する時の注意事項>
上図のアイロンは、今年(2015年)の春に購入した「My アイロン」です!!
T-falのアイロンで5千円くらいで購入できました。
クリーニング屋でしたので、迷わず、蒸気を吹き出す穴の多いのを選んでしまいました。
このくらい穴の付いているタイプはあまり無いのです。
<蒸気アイロンで仕上げる「コツ」>
ワイシャツ、色物のボタンダウンシャツ、スラックス、プリーツスカートなど、仕上げをする必要のある洗濯物は多いのですが、最初、蒸気をたっぷり出して、まず、「しわ」を一気に伸ばして行きます。 その後、蒸気を止めて、アイロンで熱を加えて、水分を蒸発させる。
要は、これだけなんですが、よく、蒸気をかけて「しわ」を伸ばすのは良いのですが、蒸気の当たった生地の水分を、蒸気を止めて、再度アイロンをかけないと、水分が蒸発しきっていませんので、時間が経つと、よれよれで、パリッと仕上がりませんので、ここが一番のポイントです。
<シャツを長持ちさせるコツ>
ワイシャツ、綿カラーのシャツなど、長く使用していると、襟や袖口が、「黄ばんだり」、皮脂汚れでボロボロになってくるのが速いのですが、アイロンをかける前に、襟や袖口にスプレー糊を部分的にかけておくと、生地が長持ちします。
私など、脂性ですので、2年も着ると、襟がボロボロになってしまうのですが、これを実施してからは、3年以上、ボロボロになることはありません。
長持ちさせたい方は、やってみてください。 本当に効果がありますので。
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・お気に入りのカラーシャツをいつまでも綺麗に着れるように仕上げる方法
(2)自分で仕上げができない場合
自分で洗うのはだれでもできますが、仕上げだけはできない場合、一つ残っている手は、街の小さなクリーニング店で、アイロンで仕上げている「おじさん」のいるお店で、「水で自分で洗ったのですが、仕上げだけ、してもらえますか?」と尋ねてみることです。
ここで、断ってくるクリーニング店は、下記のどちらかです。
・仕上げだけでは、面倒な割には、あまり「料金」が取れないと判断するか、
・「ドライクリーニング」後の仕上げしか、していなくて、水で洗ったものを仕上げる経験が少なくて、「へたくそ」なのか、
最近、仕上げの上手いクリーニング屋が少なくなっていますが、探してみてください。 1軒くらいあるものです。
ウールのスラックスも同じように洗えば、チジミませんので、水で洗ってみてください。 はいた時のさっぱり感が全然違います。
洗濯機でガラガラ回さないと、汚れが落ちないのは、ちびっ子の服と、あなたのパンツと靴下だけです。
スーツやスラックス、スカートは洗剤に付けて置いて、汚れの付いやすい部分(ポケット、袖口、襟など)を後で軽く、ブラッシングするだけで十分きれいになります。
(3)更に一手間をかけて、生地の痛みを防止する
・スラックスの場合、裾、ポケットの部分などの汚れやすい部分に、仕上げ後、自分で「撥水スプレー」をかけておくと、良いと思います。
・色物のシャツのなどは、襟の首が触れる部分に、少しだけ「スプレーノリ」をかけておくと、皮脂よごれの付着を防ぎ生地が長持ちします。
黄色くなるのも、抑えることができます。
「仕上げ」だけしてもらえるお店を見つければ、明日から自分で洗えます。 3連休ですので挑戦してみてください。
スラックスなど、水洗いもしてくれる店もありますが、ドライより、料金が高いです。
季節の変わり目には、ウール物でも必ず、水洗いをしておくと、大切な「洋服」が長持ちしますので、お試しを。
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