2018年6月12日、
本日の書籍紹介は、「自閉症の世界」 多様性に満ちた内面の真実
自閉症は、知的障害ではなく、精神疾患でもなく、感じ方や考え方が、脳内のネットワークの伝達経路が何らかの原因で異なる人たちである自閉症者を、人類に備わった「脳多様性(ニューロダイバーシティ)」という新たな視点から捉え直す科学ノンフィクションです。
そして、自閉症は治療の対象というよりは、脳神経レベルの先天性「異常」によって生じた特殊な状態であります。
– 目 次 –
第1章 グラハム・コモンズの魔術師
第2章 縁のストローへのこだわり
第3章 シスター・ウイクトリンは何を見たのか
第4章 魅力的な特異性(奇妙さ)
第5章 毒親の誕生
第6章 ハイテクのパイオニアとして
第7章 怪物とたたかう
第8章 自然界のものをはっきりと
第9章 レインマン効果
第10章 パンドラの箱
第11章 自閉空間の中で
第12章 「脳多様性」の世界をめざして
この書籍を読んでいると、私が、今まで発達障害のカデコリーの中で、呼び方が変わった「アスペルガー症候群」、「高機能自閉症」、「自閉症スペクトラム(ASD)」などについて調べてきた中で、「自閉症」であるとは、どのような事なのかを理解するために研究した人たちの歴史を交えながら、時には誤った情報を発表したりと、どれだけ苦労をして来たのか、本当にすごいなと感じることが出来ます。
この研究は、心理学とは違い、人がどう心の中で感じ取れるか、どう反応するのかを研究する試みで、他の学問で、何かを発見して、発表するのとは違い、本当に間違いは無いのだろうかと云う「問」に悩まされることになるのではないかと思うのです。
当時は、症状を特定できたとしても、未だに原因は不明のままですが、どの様な部分が、関係しているのかは、徐々にではあるが判明してきています。
レオ・カナーも、致命的な間違いを犯しています。自閉症の原因は、冷蔵庫のような母親に育てられたせいだと発表してしまいました。
後に、アスペルガー論文を発見した、ローナ・ウイングによって、発表されるまでは、カナーの説により、アメリカの母親達は、嫌な思いをしていたようです。
ハンス・アスペルガーの論文は、レオ・カナーの論文が発表されて数週間後に発表されていますが、当初は、日の目を見ないままでした。
さまざまな誤解と偏見を経て、脳科学的に理解されるまでをたどりながら、知的障害ではなく、精神疾患でもない、脳神経レベルの先天性「異常」により、感じ方や考え方が異なる人たち=自閉症スペクトラムの実態に迫ろうとしています。
幼い子供たちが、研究という名の元に、ひどい実験台にされていた様子も記載されています。
だた、脳科学の分野で、脳神経レベルの全容は解明されたわけではありません。
そうです。
「意識」がどう発生しているのかも、はっきりとまだ、分かっていませんので。
本書とは、関係ありませんが、
先日の新幹線での事件の様に、「殺すのは誰でもよかった」と言われると、社会では、どうすることもできず、システムのセキュリティを強化するのか、人間の取り締まりを強化するのか、ジレンマに陥ります。
被害に遭われた方のご冥福をお祈りいたします。
<追記>
・毎日新聞「容疑者自閉症?」記事で謝罪 「障害と事件が関係するような表現に」
・毎日新聞、新幹線殺傷で「容疑者は自閉症?」と報じ謝罪 「発達障害について不適切な記載」
この記事の見出しには、「自閉症と社会不適応・犯罪を結びつける」「自閉症=危険という印象を与えかねない報道」といった批判が相次ぎ、一方では「単に犯人の『特徴』を挙げただけで過剰反応では」との声も寄せられ物議を醸していた。
どこが、「障害と事件が関係するような表現になっていた」のか?
「自閉症」の事をちゃんと知っていれば、誰も誤解するようなことは無いはずだが、世の中、無知な「バカ」が多勢に無勢を占めているから、とんでもない誤解を生む状態なると、ここまで書いておく必要がある。なんでそこを批判できないのか?
例え、「自閉症」と診断されていたとしても、ちゃんと分かっていれば、「自閉症=危険という印象を与えかねない報道」とは思わないはずだが、誰をかばっているのか?、差別を生むのは、「無知な人間」が居るからで、責めるなら、「無知な人間」を先に責めるべきではと思うのですが。
—関連記事—
・【興味深い記事】H・アスペルガー医師、ナチスに「積極的に協力」か 研究
・「発達障害」という言葉だけが先行し、脳科学の「社会の理解が進んでいない」
・【書籍紹介】 「発達障害」と言いたがる人たち (香山 リカ著)
・【書籍紹介】 発達障害と少年犯罪 (新潮新書) 田淵俊彦、NNNドキュメント取材班 (著)
コメント