【書籍紹介】 発達障害と少年犯罪 (新潮新書)  田淵俊彦、NNNドキュメント取材班 (著)

本日の書籍紹介は、発達障害と少年犯罪 (新潮新書)  田淵俊彦(著) NNNドキュメント取材班 (著)  2018年5月20日 発行。

本書は、2016年5月15日に放映されて関係者の間で大反響を呼んだNNNドキュメント「障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年事件の間に~」の取材を元に構成されたものです。

発達障害は、手が無い、足が無いという身体上の障害と違い、目に見えない脳の機能障害ですので、差別するしない以前に、ちゃんと学校教育の中で教えていません。

ですので、大多数の人間は、せいぜい「血液型」で人の性格を判断することしかできない「無知」のままです。

しかも、症状が白から黒へのグラデーションの様に分布していますので、濃い発達障害から、薄いグレーの発達障害者も、もちろん、大勢居ます。 犯罪を犯していなくても、「サイコパス」の特性を有した、経営者などは世の中にちゃんと存在しています。

心療内科医ではありませんが、大体、話している内に特徴で分かりますので、私は、勝手に、色が薄い場合は「マイルドな発達障害」と言っています。

大人でも、何とか、ギリギリ社会的に適合して生きている「マイルドな発達障害」など、実に多いと思います。 学校に行けない子供たち(不登校)、「引きこもり」の大人たちの何割かは、発達障害などの障害を背負ってしまった人たちが多いのです。

脳が、1,000億個のニューロンと100兆個のシナプスで繋がっていて、自分の脳内で情報の伝達がどう行われているのかも知らない無知な国民が多勢無勢を占めています。

 

<発達障害と少年犯罪>

– 目 次 –
第一章  猟奇殺人の背景にある発達障害
第二章  自閉症スペクトラム障害は、ここまで分かってきた
第三章  虐待が脳を破壊する
第四章  矯正施設にいる少年たちは何を語ったか
第五章  矯正施設から始まった画期的トレーニング「コグトレ」
第六章  教育現場での取り組み
第七章  トラウマ治療の現場に入る
第八章  「出世魚現象」を防げ
—————————

1.まず、本書を読む前に

人類の歴史をたどると、「自閉症」的な人間は、いつの時代も、数%は、必ず存在しています。 なぜ、この様な症状をおびた人間が存在するのか?

人類進化の過程で、必要な脳をもった人たちなのか?

ここに、面白い事を書いている論文があります。
発達障害のうち、自閉症とりわけ、ASD(自閉症スペクトラム障害)の人たちの事を記載していますが、なぜ社会性に問題があるとされる自閉症が、今も淘汰されず1−2%という高い頻度で存在しているのか?

自閉症は人類進化に必須の性質(11月15日Time & Mindオンライン掲載論文)

この総説は人類進化と自閉症について、多くのヒントを与えてくれたと満足している。
著者らの問題は「なぜ社会性に問題があるとされる自閉症が、今も淘汰されず1−2%という高い頻度で存在しているのか?」で、これに対して「共同的道徳性の誕生が人類進化の必要条件だが、これには多様な人材を擁することが重要になる。自閉症的傾向を持つ人材は、一つのタイプとして必要とされ、また尊敬されることで、進化で淘汰されることはなかった」という答えが結論になっている。

存在する理由が、ちゃんとあるのではないかと、言っています。
自閉症は社会性が欠如しているとよく言われるが、それには反対している。自閉症の人たちは、私たちが持っている、他の人も自分と同じように考えているとするTheory of Mindの代わりに、他人の意見に流されない、法則に従うようなTheory of Mindを持っていることを強調している。この例として、自閉症の人には数学者、物理学者、技術者、そして法律家が多いことをあげている。
現代では、ビル・ゲイツ氏、スチーブ・ジョブズ氏(故人)、アインシュタインなど、数えれば、きりがないくらい、イノベーションを起こした人たちが存在しています。

 

2.社会的に適合できない子供たち、人間たちをどう扱うべきか、どう育てるべきかという大きな意味がある。

本書で書かれているタイトルを見て、「発達障害=犯罪者のレッテルを貼っているのか」などのつまらない意見ではなく、人類学的にも見て、このような人たちが、悪の道に入り込まないようするのは、子供の頃から、差別や排除するのではなく、ちゃんと、社会で育てて行く必要があるという事を大切にしている。

1)社会的に適合できない子供たち、人間たち、「適合できない」という事は、どのような事だろうか?

集団で生きてゆく上で、「逸脱」してはいけないことをしてしまう?

何をどう、「逸脱」すれば、「適合しない」と言われてしまうのか?

法律で規定されている事から、そうでない事まで、広範囲に渡ると思うが、なぜ逸脱してしまうのか?

法律で規定されている事柄以外においては、社会人でも、良い意味、悪い意味においても「逸脱している奴」は腐るほどいる。

 

動物の社会的行動の進化という点においては、人間は高度な社会性を身に着けているもの、いないもの、色々な人間が存在します。

この高度な社会性とは別に、特殊な能力(桁外れの記憶力、鋭い視覚・味覚・嗅覚など)の由縁において、数千年前の社会では、自閉症的特性を持つ者は受け入れられていただけでなく、大いに尊敬されていた可能性もあります。現代社会においても、自閉症スペクトラムを有した経営者の代表例で云えば、Microsoft創業者の「ビル・ゲイツ」などもそうです。

これまで自閉症スペクトラム(ASD)は、「脳」の発達障害のせいと思われていましたが、しかし、現在では、脳に知覚情報を送る腕、脚、手、指、皮膚などの神経障害のせいかもしれない可能性も浮上しているとも言われています。

 

2)人と違うというだけで、差別してしまう「無知」な集団、社会

発達障害ゆえの特性として、コミュニケーション能力の低さ、こだわりの強さ、他人の気持ちへの理解の乏しさなど、様々な理由で、小さい頃から、本人が虐待を受けたり、孤立してしまったり、誤解を受けたりということが、度重なると、それが結果的に犯罪(加害者、被害者)に繋がってしまうという傾向があることは、否定できない。

発達障害と犯罪に直接の関係は無く、その証拠に、発達障害を持っている人が、全員、犯罪を犯していないので、それは明らかですので、そこは、完全に誤解の無いようにしてほしいものです。

 

私の嫌な言葉に「」を付けていう事があります。例えば、「心の闇」など。。。

「闇」ではない。

「闇」なんて言い方をしても、「無知」な奴らには、正確に理解できないのです。

嫌われる勇気さえあれば、「闇」なんて言わないで、「脳」の配線のおかしいと、ハッキリ言えばいいんだが。。。。世間は、脳科学がこれだけ発達しても、無知で「闇」でかたずける方が、なんとなく、当たり障りが無い言い方なので、自分に非難が来ないように、無難な言い方で良いのかもしれないが、勉強不足が露呈しています。

 

3)発達障害などの脳の機能障害を知るには、

まず、脳の構造、一般的に知られていない、発達障害、愛着障害、人格障害、これらが、どうかかわっているのかについて知っていないと、理解できません。

例えば、
・どう影響するのか?
生まれつきなのか、誕生後、育って行く環境の問題なのか、親がなっていた場合、子供にも遺伝するのか、この様な障害を持った親の影響で子供の将来にどう影響するのか?

・脳内のどのような部分が機能障害を起こしているのか?
「ニューロン」と「シナプス」の関係と、「脳内ホルモン」の生成場所、働きと情報の伝達方法とは?

・全容は解明されていないが、脳の中のパーツ、前頭葉、前頭前野、側頭葉、海馬、偏桃体、大脳基底核など、各機能部位は、どのように機能しているのか?

・遺伝学的には、どのようなメカニズムがあるのか?

2016年9月8日、自閉症の発症メカニズムを突き止めたと、九州大生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授(分子生物学)らの研究グループが9月7日付の英科学誌ネイチャーに発表しました。自閉症の原因遺伝子がタンパク質に作用し、神経発達の遅延を引き起こす過程を解明したそうです。

遺伝子「CHD8」が半欠損したノックアウトマウスをつくり、自閉症を発症させて検証した結果、この遺伝子が神経の発達を制御するタンパク質「REST」を異常に活性化させ、神経発達の遅延を引き起こすことが分かった。

遺伝子の研究により、自閉症と自閉症的特性は、長い時間をかけて我々を人間たらしめたものの一部であったことが判明している。いくつかの重要な自閉症遺伝子は、我々共通の祖先だった「類人猿」からの遺産であり、それが分かれ道において我々を人間の道へと歩ませたともいえるのではないでしょうか。

 

本書はそうした事実を冷静に見据えつつ、実際に犯罪をしてしまい、加害者となってしまった少年たち、矯正施設や学校の関係者、トラウマ治療の現場、発達障害をもつ子どもたちを支える精神科医などに取材し、事態を改善させる方策を探ったものです。

 

3.人類の中で、ホモ・サピエンスだけが生き残ったのか? 何故、生き残れたのか?

同じ、脳をしている者同士では、社会や環境などに、対応できないのでは無いかと思います。

ハチやアリなどコロニーを形成する生き物は、誰も、司令塔の様な個体は存在しません。そして、働いているのは2,3割で、後の個体は、働いていないようです。

それぞれ、個体差があり、みんな一斉には働かない。 例えば、巣の温度が上がった場合、その温度で、暑いと感じた個体だけが、働きだして、巣を冷やす。

全員ではたらいで、疲れてしまっては、全員滅ぶ可能性があるので、個体差を利用して、生き抜いているようです。 その時、働いていないからと言って、決して、無駄ではないのです。

 

1)生き物が、絶滅せずに生き残る条件は、

サメなどのように、絶対、何も変わらないか、 常に、集団を形成しているか、常に進化して生き残るか。 食物連鎖の頂点に君臨していても絶滅する。

地球規模の環境変化にも耐えられる、生き残る為の条件は何なのでしょうか?

 

2)人類の進化をおさらいすれば

現在、NHKの番組で、「人類誕生」という番組を放送していますが、なぜ、ネアンデルタール人が、滅んで、ホモ・サピエンスだけが生き残ったのか? 考古学、人類学の分野で、諸説ありますが、ネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスより脳の容量が少なかったわけでもないし、身体能力的にははるかに勝っていたにも関わらず、滅んでしまったのか。

強い者が勝つとは限らなかったのは、弱さからか、ホモ・サピエンスは集団を形成していた。片や、ネアンデルタール人は、せいぜい家族単位の人数でしか集団を形成していない。

ホモ・サピエンスが、集団を形成できた訳は、そこに何らかの宗教的なものがあり、そのおかげで、大きな集団を形成できたために、滅びることなく、進化して、適合できてきたのではないかと言われています。

ネアンデルタール人(一足早く、アフリカを出た人類)が暮らす中に、アフリカで新しく発生したホモ・サピエンスが、アフリカを出た人類が、遭遇して、同じエリアで暮らしてきたが、争いは無かったのか?

そして、驚くことに、ネアンデルタール人の「DNA」は、人類発祥の地、アフリカ中部の人には、無いが、ヨーロッパ、アジアに人たちの中に、数パーセント含まれているのです。

同時代、接近して暮らしていたのです。ですので、我々の中に、ネアンデルタール人のDNAが混ざっているのです。

ネアンデルタール人は、体も大きく、身体能力もありますので、大きな動物を捕獲していたが、ホモ・サピエンスは、体力も無く、最初は大型動物の捕獲は無理で、小動物を捕獲していたのではないかと言われています。普通は食い物で争うが、捕獲する動物が違うので、競合していないのではないかと言われています。

捕獲するための道具も、ネアンデルタール人はあまり進歩が無いが、ホモ・サピエンスは弱いが為に、道具はかなり進歩が見られます。

この様に、弱いが、宗教的な繋がりで、集団を形成するようになったホモ・サピエンスは、地球の気候変動にもたえ、ネアンデルタール人よりも弱かったが、滅びること無く生き残れた。

片や、ネアンデルタール人は、大集団を形成することなく小集団のまま、最後は、ヨーロッパの西の果てで、絶滅してしまった。

およそ700万年前に誕生したとされる人類の祖先。その進化の歩みは、「猿人から原人から旧人から新人」という単純なものではなく、考古学上、現在分かっているだけでおよそ20種の人類が時には共存し、誕生と絶滅を繰り返していたとされています。

言語を操り、道具を改良して、高い知能を有すると、体力的に劣っていても、その他の動物と違い、進化の過程で生き残ることができた最後の人類が、ホモ・サピエンス、我々なのです。

ホモ・サピエンスは、集団化しても、宗教などを利用して、多様な人間性を認めて来たから、生き残ったのだと思います。

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最後に、

脳の障害、特異性について学ぼうとすると、人類学、脳科学、脳神経学、遺伝学、社会学、遺伝子の変異など、実に広範囲な知識が必要になります。

それを繋ぎ合わせないと、中々、理解できない領域の問題でもあります。

ホントは、「いじめ」についても同じで、「人はいじめを止められない」のです。何故なら人類の特性だからです。 ならば、いじめが発生することは、誰も止められないのですから、「隠蔽」すること無く、発生した後の事を考えて対処すれば良いのですが。。。。

もう、学校教育の中で、ちゃんと、人間の本能に近い処の「性質」まで教えるべきです。

発達障害、愛着障害、人格障害についてもです。

社会人となり、世の中に出てから、何も勉強しない奴が多すぎますので、「無知」を少しでもなくすためにも、学校教育で教えるべきことを再考した方が良い時期に来ていると思います。

世の中、これだけ情報が溢れていても、自分自身で情報を「取捨選択」する以前に、字は読めても、内容を理解できない、「読解力」の無い人間が、溢れていますので、若いうちに、学校教育で、基本的な事柄を教えておくのが、無難な方法ではないか。

そうすれば、自分と違う人間を 差別したり、いじめたりする事は、人間として恥じる行為なんだと、少しは理解できるでしょう。

「人間とは何者か?」と、被害者も加害者も、知ることができれば、起こったことが、良い事なのか、悪い事なのか、判断が少しはできるでしょう。

もっとも、「サイコパス」の様な人間には、いま言っていることなど、通用しないと云う事も理解する必要が有るが。。。。。自分の弱さ、依存心の強さから、引き込まれてしまうが、気が付いた時には、そこから後戻り、脱出することが、命を引き換えにしないと、逃げ出せない状態になり、「悪」に加担してしまう、犯罪に巻き込まれてしまうのが人間です。例え、悪の心を持っていなかったとしてもです。

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