【書籍紹介】「睡眠の科学」 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか 櫻井 武 (著) まだ未解明な点が多い

本日の書籍紹介は、「睡眠の科学」 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか 櫻井 武 著

脳神経学に関する書籍を多数読んできましたが、「睡眠」についての仕組みが書かれた書籍を読むのは初めてです。

脳の構成部品である「前頭前野」、「海馬」、「偏桃体」、「側坐核」などの大脳辺縁系、神経細胞(ニューロン)、シナプス、脳内伝達物質などの用語の役割がある程度、理解していれば、楽しく読み進めることができる、大変興味深い「睡眠」についての一冊です。

脳の勉強をしだすと、構成部品の単体の機能もさることながら、機能部品どうしがネットワークを幾重にも張り廻らして、各種の脳内伝達物質を使いながら、お互いにやり取り(情報伝達)しながら機能していますので、本当に難しいです。 脳の中は、脳細胞(ニューロン)は1,000億個、それを繋ぐ「シナプス」の数は100兆個、成長すると脳の記憶容量が、1ペタバイト!!!だそうです。しかも脳細胞をバックアップしている「グリア細胞」も重要な役目を果たしています。

「睡眠の科学」 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか

目 次
第1章 なぜ眠るのか?
第2章 最新技術で探る「睡眠の正体」
第3章 睡眠と覚醒を切り替える能のしくみ
第4章 睡眠障害の研究から生まれた大発見
第5章 オレキシンが明かした「覚醒」の意味
第6章 人はどこまで睡眠をあやつれるのか?
第7章 睡眠に関する日常の疑問と、これからのテーマ
終 章 なぜ眠るのか 私の仮説
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面白いのは、動物やヒトにとっては睡眠の状態が「デフォルトであり、視床下部外側野にある「オレキシン(覚醒を促す神経伝達物質)作動性ニューロンが覚醒システムを刺激することにより、覚醒状態が引き起こされ、維持されているようです。

「睡眠」という状態は、脳にとっては、レム睡眠(Rapid Eye Movement)とノンレム睡眠(Non-Rapid Eye Movement)に分類されるが、レム睡眠では脳は覚醒状態以上に活発に活動しています。夢を見ることが多いレム睡眠です。何をしているかと云うと、記憶の整理(海馬から大脳皮質へ)、老廃物の掃除などで、動物は寝ないと、気が狂って、死んでしまいます。

更に、人間は無理ですが、バンドウイルカは、泳ぎながら大脳の半球で睡眠を取ることができます。渡り鳥なども半球睡眠を取りながら飛び続けているようです。

レム睡眠はノンレム睡眠と比べて「量的」に違うのではなく、「質的」に全く違う性質を持っていて、コンピューターで例えると、電源が入ってWEBに繋がっている状態が「覚醒」している状態、スリープモードの状態が「ノンレム睡眠」、オフラインで使っている状態が「レム睡眠」の状態だそうです。

この書籍には、記載されていませんが、脳の老廃物掃除は、夜勤体制(寝ている時に)で行われている事が研究で分かってきています。

細胞と細胞の間(細胞間隙)は血管から漏出した体液で満たされているが、細胞から排出された老廃物を含む体液はリンパ液となって全身に張り巡らされたリンパ管に入り、徐々に太いリンパ管へと合流し、最終的には血管に流し出される。 しかし、脳内ではリンパ系システムが見つかっていなのですが、脳内の細胞には大きく分けて神経細胞とそれ以外の細胞(グリア細胞)の2種類で構成されていますが、睡眠中にグリア細胞が縮むことで神経細胞の周囲に「大きな隙間」を作り出していることが分かった。

「グリア細胞」は神経細胞の間を埋めるだけではなく、ある種の突起を延ばして脳内の動脈の周囲を包み込み、血管の外側に狭い隙間を作る。「脳脊髄液」はこの隙間を伝って脳の細部に入り込み、神経細胞の周囲にリンパ液として滲み出す仕組みになっているようです。
参照:睡眠不足に注意! 脳の老廃物掃除は夜勤体制

睡眠負債について
1日、6時間以下の睡眠時間を続けると、がんのリスク、認知症のリスクが高まるようです。
最低でも7時間から7時間半くらいの睡眠時間を取るように心がけたいものです。 日常の中で、短時間の睡眠は、上記の「脳のお掃除」の時間が、ちゃんと取れないので、あまり意味のない睡眠でしょう。 やはり、ちゃんと連続して取らないと、結局、脳のお掃除が上手くゆかず、寝不足と同じようにゴミ(βアミロイド)が溜まってしまうでしょう。  

不思議なのは、「脳」が使うエネルギーの内訳です。
・意識活動に5%
・脳細胞の維持・修復に20%
・無意識活動に75%

人類って、ほとんど、無意識で動いているのか?。。。。自分の自由意思で動いている時は5%しかエネルギーを消費していません。しかも、注意している処しか観ていません。 ですので、私など、「手品」が、楽しいとか、不思議だとか、思ったことがありません。

人間って注意したところしか見ていませんし、目から脳まで伝わる視覚の信号も速すぎると、遅れるので見えないし、動画の様に1秒間に20枚以上の絵を見せられると、動いているように見えるだけで、実際は動いていません。どれも、脳の限界を超えれば、存在しないのと同じになります。

もう一つ、自分の視覚で、物など、カラーで見えていますが、本当は、現実では、カラーではありません。光が屈折して、網膜でそうとらえて、脳に信号が入って、色が付いているように錯覚しているだけです。 残念ながら。。。。。 犬や猫の見えている白黒の世界が現実です。

追記1
2017年5月 筑波大学で、突然眠り込んでしまう睡眠障害「ナルコレプシー」を治療する効果がある物質を開発し、マウスを使った実験で確認したそうです。 オレキシンと同じ働きを持ち、体内で分解されにくい物質「YNT―185」を開発、ナルコレプシーの症状がある6匹のマウスに3日間、注射などで与えたところ、発作を抑えられた。

補足説明:ナルコレプシーとは
突然、気絶するように眠ってしまったり、気持ちが高ぶったときに全身の力が抜けて倒れ込んだりする。脳内で「オレキシン(またはヒポクレチン)」というホルモンが欠乏し、睡眠と覚醒をうまく切り替えられなくなるために発症する。昼間に突然の睡魔や睡眠発作が現れることがあります。1000人に1人が発症するといわれています。

追記2
睡眠障害について
■いちばん多い睡眠障害
・原発性不眠症 :
原因になっている病気(基礎疾患)がないタイプ。
・続発性不眠症 :別の病気が原因のタイプ。

■不眠症の症状
・睡眠時無呼吸の症状(閉塞性睡眠時無呼吸、中枢性睡眠時無呼吸)
・ナルコレプシーの症状(過眠症)
・むずむず脚症候群の症状(レストレスレッグス症候群)
・人の体内時計、サーカディアン(概日)
リズム障害の症状 (交代勤務睡眠障害、睡眠相後退症候群、睡眠相前進症候群)

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